コンビニのレシートに導かれた俺と彼女は、天使と出会う

あかせ

天使の導き

 ある日の午後9時30分頃。俺は近所のコンビニに向かっている。


高2の俺が出歩くと警察に帰宅を促される時間だが、家にお菓子がないことをさっき気付いたのだ。


夜更かしするには、お菓子は欠かせないだろ?



 通い慣れたコンビニに入る俺。


「いらっしゃいませ…」


俺と歳が近いと思われる女子が、レジで挨拶をする。

店内に客は俺1人のようだ。


あの女子、どっかで見たことあるような…? どこだっけ…?


…思い出した。同じクラスの人だ。話したことがない人だから、記憶が曖昧だな。


誰かをはっきりさせるために、俺はレジの女子に声をかける。

向こうも暇そうにしているから、声をかけても問題なさそうだ。


「なぁ。勘違いだったらすまんが、俺達同じクラスだよな? 俺、冴木さえきだけど…」


向こうは、俺のことがわかるかな?


「そうだよ、冴木君。私のこと、わからないんだ…」

落ち込む女子。


「…ゴメン。俺達、話した事ないだろ。だからさ…」


「気にしなくて良いよ。私、木下って言うの」


「木下さん…。うん、ちゃんと覚えたよ。もう忘れないから」

人の名前を忘れるのは失礼だからな。気を付けないと。


「冴木君の家って、この店から近いの?こんな時間に来るんだもん…」


まさか、木下さんが話を振ってくるとは…。


「そうだよ。これから夜更かしするためのお菓子を買いに来たんだ」


「そうなんだ…。明日も学校あるんだから、程々にしたほうが良いよ…」


心配してくれるのは嬉しいが、彼女も同じだろ…。


「そういう木下さんこそ、こんな遅くまでバイトしてるの? 大変だね」


「私も冴木君と一緒で、家がこの店から近いの。だから全然問題ないよ」


「へぇ~」

木下さんと共通点があるなんて驚きだな。



 …お客さんが1人入ってきた。彼女の仕事を邪魔したくないし、おしゃべりはここまでだな。


俺はレジから一旦離れ、買いたいお菓子を持って再びレジに向かう。

会計を済ませてからレシートを受け取り、財布に押し込もうとした時に気付く。


何だ? 赤い字がレシートの裏に書かれている?

赤が濃いので、表から透けて見えるな。


その場で詳細を確認したかったが、後ろにさっき入ってきたお客さんがいる。

会計の邪魔をする訳にはいかない。


俺はレジから少し離れ、レシートの裏を見る。すると印字でこう書かれていた…。


【午後10時30分に、成羽手なりわて公園に来て下さい】


成羽手公園というのは、このコンビニから徒歩数分のところにある小さな公園だ。

一体何の用だろう? 想像がつかない…。


というより、彼女はどうやってレシートの裏にこれを打ち込んだんだ?

裏に印字ってできるの? 俺にはよくわからん…。


木下さんの様子を確認するが、会計中なのでよくわからない。真意を訊くためにも、待ち合わせ時間に成羽手公園に行くとしよう。



 一旦家に帰って時間を潰してから、成羽手公園に到着した。

時間はどうだ? 公園内の時計を観る。


午後10時25分のようだ。ちょうど良い時間じゃないか。

小さな公園で出入口は1か所しかないので、木下さんを見落とすことはない。


…彼女がやってきた。さっきはコンビニの制服だったが今は私服だ。


俺が木下さんに声をかけようとした時…。


「冴木君、私に何の用なの?」


「は? 何のことだ?」

訳が分からないことを訊かれたぞ…。


俺に用があるのは、木下さんのほうだろ?


「これだよ。これ書いたの、冴木君でしょ?」

そう言って、彼女は小さなメモ用紙を見せてきた。


そこには【午後10時30分に成羽手公園に来て下さい。冴木より】とある。

…これは俺の字じゃない。誰かのイタズラだ。


「私の机の中に入ってたの。って書いてあるんだから、君が書いたんだよね?」


机というのは、学校のことか。


「違う! 俺はそんなの書いてないぞ。誰かのイタズラだよ!」


「…えっ。そうなの…?」

木下さん、戸惑っているな。


何でこんなことが起こる? さっきのレシートはどうなんだ?


「木下さん。さっきのレシートを見てくれ」

俺は赤で印字された部分を彼女に見せる。


「何これ? 私、こんなの知らない。でも…」


レシートには会計した時間が打たれている。時間的に、俺が持っているレシートは木下さんが出したことは間違いないのに、彼女はまったく知らないようだ…。


「俺達を、この公園に呼んだのは誰なんだ?」


「わからない…」


「その疑問は、あたしが答えてあげるね♪」


突然中学生のような子供の声が聞こえた。

公園内を見渡すが、そんな子はどこにもいない…。


「さっきの声は、どこから聞こえたの?」

木下さんもキョロキョロしている。


幻聴ではなかったようだ…。


「上を見て、お兄ちゃん達♪」


そう言われて上を見ると、羽が生えた女の子がいた…。

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