19 挑
「ぼくは、それでもいいけど」
「わたしがイヤみたい」
「そうは見えないけど」
「やっぱり伊勢くんは朴念仁ね」
「そうかな」
「自覚はないの」
「まあ、ないといえば嘘になるかな。蓮見さん、キスしていい」
「どうぞ」
「あの、目くらい瞑ってくれる」
「しようがないわね、ハイ……」
「では……」
「いやだ、震えてるじゃない」
「武者震いだよ」
「意地っ張りね」
「どういたしまして」
「……」
「……」
「で、次はどうするの。胸を触っていいとか聞く」
「調子が狂うなあ」
「とにかく場所を移動しましょう」
わたしがそう言い、二人でまたベッドの上に座り直す。
少なくとも前よりは好い雰囲気だ。
けれども手を伸ばし触っても伊勢くんのペニスは大きくなった感じがしない。
「もしかして勃起不全症とか」
「そっちだって濡れてないくせに」
「わかるの」
「いや、わからない」
「あははは。……伊勢くんのそういう正直なところが好き」
「ああっ、蓮見さん。はしたないよ」
彼のペースに任せると服を脱ぐ前に朝になってしまいそうだ。
だから気は進まなかったが、わたしから誘惑する。
「はい、これがわたしの胸。しばらく触ってて……」
その間にわたしは両手を用い、伊勢くんのネイビーブルーのチノパンを脱がす。
「蓮見さんの胸、柔らかいね」
「伊勢くんが上手く弄べば先端が固くなるわよ。……あら、こちらは反応したみたい」
「恥ずかしいな」
「それはわたしの台詞だわ」
「蓮見さんは男を襲った経験はないの」
「そこまで行く前に熱が冷めたから伊勢くんが始めて」
「そうなんだ、光栄です……って、あああっ」
「これで延び切りなのかな。伊勢くんのって思ったより……」
「小さくて悪かったね」
「いえ、わたしにはちょうど好いわ。……あら、でもそう言ったらもっと延びた。わーい」
「蓮見さん、ぼくをからかっているでしょ」
「こういうふうなのも愉しいわね。新発見だわ。でも伊勢くんは愉しくないかな。男のプライドもあるし」
「ぼくに、そんなものはないよ。あるのは自分に対する高慢だけ」
「じゃ、わたしの偏見だったのね」
「蓮見さん、胸に変化がないよ」
「雰囲気が悪いのかしら。とにかく電気を消して……」
部屋の照明スイッチを切ると残された灯りは窓越しの街灯だけからのものになる。
「すぐ近くに街灯があったんだ」
「この部屋が二階だから近くて……。けっこう明るいでしょ。カーテンを閉めるわね」
「うん」
ついでにわたしがトップの黒いパーカーを脱ぐ。
スポーツブラも外そうとしたが、一応伊勢くんに聞いてみる。
「わたしのブラを脱がせたい」
「蓮見さん、雰囲気台無し。でも、そうしようかな」
「ああ、伊勢くん、くすぐったい。……ええと、それ、後ろや前にホックがないから、普通に脱がせるしかないのよ」
そう言い、わたしが身体を傾け、頭を伊勢くんの方に向ける。
両手も先端を合わせ、伊勢くんにスポーツブラを脱がせ易くする。
「伊勢くんって、いずれ女をあっという間に裸に向くことができるようになるのかな」
「さあ」
「覚悟を決めて全部脱いじゃいなさいよ」
「どうして蓮見さんの裸は上半身なのに、ぼくは下半身なのさ」
「じゃあ、生まれたままの姿にしてあげる」
伊勢くんにスポーツブラを脱がされたその手で伊勢くんの着ていたTシャツとその下のタンクトップわたしが脱がす。
伊勢くんの頭からスポッと脱がすと男の裸体が現れる。
「意外、腹筋が割れてる」
「ぼくは中年のオジサンじゃないからね」
「触っていい」
「ホラ、蓮見さんだって断るじゃないか」
「伊勢くんの癖が移ったかな。好い触り心地……」
けれども伊勢くんの腹部を触った手をペニスに戻すと、もう柔らかい。
ちょっとがっかりだ。
だがそう思った矢先、忽ち伊勢くんのペニスが硬さと勢いを取り戻す。
だから安心。
「このまま扱いて出しちゃおうかな」
「その辺りは任せるよ。あああ……」
「いやだ、女の子みたいな声」
「仕方ないだろ。わあああ……」
「わたし、口も使おうかな。でも、その前にシャワーを浴びてらっしゃい」
そう言い、わたしがバスタオルを取りに立ち上がる。
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