第23話

 一番地のとある場所。そこでは一番地の犯罪者達が物陰に隠れて銃を乱射していた。

「何なんだ! 何なんだよ、あのガキ共は⁉︎」

「撃て! 撃ちまくって殺せ‼︎」

 物陰に隠れていようがお構いなし。凛と蘭は壁ごと犯罪者を片っ端から巨大な金槌で叩き潰していた。太一の『下手に殺せば報復を受ける』という忠告は聞いていなかったのか、躊躇せず殺し続けている。

「うおおぉぉ‼︎」

 そんな二人に対し、大して狙いも定めずアサルトライフルをフルオートでドパパパパ! と、乱射する残った一人の犯罪者。

「私達に」「銃は無駄」

 弾丸を躱しながら二手に別れて、最後は金槌でサンドウィッチのように挟み潰す。犯罪者は「ぷげっ⁉︎」という声を上げて、血と骨や臓器を撒き散らしながら絶命した。凛と蘭の二人は金槌を地に付け、周囲を見渡す。

「赤い花沢山咲いたのに」「アウトロー誰も来ない」

 向かい来るのは犯罪者だけ。狙いのアウトローが来ないことを不思議に思い、二人は同時に首を傾げた。

「【三番地の女盗】か」「リンファの所に二人?」

 敵のアウトローの分かっている数は三人。ここの騒ぎに気づかず、彩葉かリンファの所に二人行った可能性は十分に考えられる。

「いたぞ!」「あのガキ共だ!」

 二人に考える間を与えぬかのように、騒ぎを聞きつけた犯罪者達が次々と武装をして現れた。

「作戦を」「継続する」

 金槌を構えた二人は、続々と来る犯罪者達を殺すことにした。


「おい、姉ちゃん。どこに行くんだい? ん?」

 銃火器を装備した大勢の一番地の犯罪者に囲まれているリンファ。犯罪者達はチャイナドレスを纏う彼女の美貌に鼻息を荒くして、鼻を伸ばしていた。スタイルの良い彼女を無理矢理犯すことを想像しているのだろう。

「慌てないヨ」

 興奮する犯罪者達を一瞥したリンファは、自身の手刀で右手首を切り、右手から血を垂らし、

蠢く血液ライジング・ブラッド

 【咎】によって血液で中国刀を形成した。

「すぐ逝かせるネ」

 そう言ったリンファが目の前から消えると同時、囲んでいた犯罪者達の首がスパンッと、宙を舞う。太一の意志に反した凛と蘭同様、やはり簡単に敵を殺したリンファ。二番地が襲われたことが、それ程腹立たしかったのだろう。

「このアマ……アウトローだ‼︎」「撃て! 撃ちまくれ‼︎」

 犯罪者達が撃ってくると同時、銃弾を躱しながら駆け、相撃ちを誘った。リンファが攻撃せずとも、犯罪者達は自分達の銃弾でその数を減らしていく。間抜けなことこの上ない。

「バッキャロー! 囲んでるんだから撃つんじゃねぇよ‼︎」

 その言葉と共に銃弾の嵐が止むと、再びリンファは犯罪者達の首を刎ね始めた。周囲一帯の犯罪者の首を刎ね終えると、中国刀を血液へと変え、自身の右手首を通じて体内へと戻し、その部分を舌でぺろりと舐める。

「男、下半身で動く馬鹿ネ」

「申し訳ありません。欲に飢えてるのですよ、彼らも」

 リンファは次の暴れる場所を求めて、捨て台詞を吐いてその場から去るつもりであったが、返答があったことに驚く。返答をした男は糸田紡。気配を消して、ひっそりと近づいていたのだ。

「オマエはチンポでも取ったカ? 【一番地の執事】」

「シロ様という神を普段から身近で見ており、美の慣性が常人とは違うだけですよ」

 不意打ちすることもできたであろう糸田が、それをしなかったのは自分の力である【咎】への絶対なる自信があるからだろう。

「二番地襲った賠償金払うネ」

 再び血液から中国刀を形成したリンファは、そんな糸田に猛然と迫った。


 片っ端から一番地の犯罪者を倒していく彩葉。一番地の犯罪者達は銃火器で武装しており、一筋縄ではいかない。

「しっかり狙え! 何やってんだ⁉︎」

 それでも彩葉はアウトロー。人間の身体能力を超越しており、無数の銃弾を時には地や壁を駆け、時には宙を舞って躱していき、犯罪者達の意識を次々と奪っていった。

 武装した数十人の犯罪者達を無力化した彩葉は、指揮をとっていた犯罪者に迫る。

「……ぐぅっ……!」

「あんたが最後さね」

 彩葉が指揮官の首を手刀で軽く叩いて、気を失わせようとした、その時――。

「ひゃっはああぁぁ‼︎」

 大声を上げて焔を纏いながら、炎士が彩葉に向けて突っ込んで来た。その勢いたるや、まるで火山が噴火したかのようだ。

「【四番地の獄炎】……!」

 タックルでの突進を彩葉が跳んで回避すると、炎士は彼女の側にいた犯罪者の指揮官を吹き飛ばし、突進の勢いそのまま誰も住んでいない家屋へと突っ込んでいった。

 当たられた指揮官は「ぎゃっ!」と情けない声と共に、燃えながら何処かへと吹き飛ばされていった。おそらく命は無事ではないだろう。

「まるで猪さね……」

 アウトローを相手にするのは骨が折れるが、ここに炎士が来たということは、作戦が今のところ成功してるということ。この状況は彩葉にとって喜ばしいことなのは間違いない。

「昨日の敵は今日も敵ぃ! 消炭にしてやんぜ!」

「こんな馬鹿の相手……勘弁してほしいよ」

 しかし性格的な相性が最悪なため、思わず悪態をついてしまう彩葉なのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る