77話 隠された都市ヨールン(2)
「ところで……」
俺が『
「足音、大きくなってない?」
確かに、先程に比べるとズシンズシンと地面を揺らす振動が大きくなっている。しかも、その間隔がどんどん速くなってきているようだ。
「タロが見た、巨人って奴が近づいて来ているのか?」
「この速さ、もしかして走ってませんか?」
「わからないけど、ここから移動した方がいい気がするよ。みんな、いこう」
だけども、問題はあった。
「あの光ついてきてるな」
『
それどころか……。
「足音が複数、違う方向からどんどん近付いて来てる?」
「早い話、何かが俺達の居場所を
「まさか……」
「あれのせい?」
「小官の勘が言っております。あれしかないと」
「ですよね」
「そうでありんすね」
「月光を宿す
みんなの考えが一致する。
この薄暗い都市で、わずかな光を提供してくれる光の正体は巨人を呼び出す何らかの役目を担っていると。
「あの光をどうにかしないと!」
建物の上をふよふよと漂う一匹の
「でも、あの光は攻撃してきてないのに……いいのですか?」
心優しいうちの神官さまが心配気に
「仮に、あの光が巨人を呼び寄せているとしてね」
おそらく、その予想は間違ってないだろう。
俺達があの彷徨う白い光に発見されるまでは、巨人たちの足音は非常に安定していたのだ。
「近づいて来ている巨人が敵か味方かわからない以上、このまま巨人たちと会ってしまうのはボク達にとってマズイと思う」
おそらく戦うはめになったら、巨人は強敵だろう。
「だから、巨人に会うにしても、こちらから相手に気取られずにひっそりと観察した上で、どうするか判断したい」
「早い話、危険な芽はつぶしておくべきだ」
リスクはなるべく避けながら、この地下都市ヨールンの攻略を進めていきたい。それには突発的な巨人戦を行うのではなく、あらかじめ情報をなるべく得た状態で挑みたい。
「よし! あの光を倒そう!」
俺は、
それに呼応して、みんなも各々の武器を構えた。
「だが、あんな高いところにいられたんじゃ、どうしようもないな」
「『飛翔脚』じゃ届かない?」
「もうちょい、高度が下がったなら……いけるかもしれん」
親友二人の短いやり取りを聞いていたミナがメイスをしまい、前へと出た。
「では、わたしが!」
「ミナさん、それはダメだ! タロの方で、もうちょっと地味に頼めるかい?」
魔法攻撃を『
「できなくはないかも」
俺の取れる遠距離攻撃の方法は、アイテム『打ち上げ花火(小)』と『
「じゃあ、任せたよ」
なるべく地味にと言われたので、『打ち上げ花火(小)』はダメだろう。となると、スキル『風妖精の友訊』がLv15にアップし、フゥが『
「『風妖精の友訊』たる我が願いを聞き遂げよ……美しき
果たして、俺の
「タロん――私は、
「うん。とっても美しいよ」
「タロんタロんっ♪ ウフフのフゥ!」
風に揺れる自分の髪の毛をくすぐったそうになでつけ、キャッキャと喜ぶ姿は前とあまり変わってないように思えるけど。心なしか、仕草が大人っぽくなった感じもする。そんなフゥの
そして、おぼろげな光に向かって『風の刃』的なモノを飛ばしてほしいとフゥに念じる。
「うむむーん! 任せてタロんっ」
フゥがさらりと腰よりも長い髪の毛をかきわけると、その髪の先端が宙空に溶けていくかのように風へと変貌していくのがわかった。
「ええいっ!」
可愛らしくも真剣なフゥの掛け声が発せられたかと思うと、『
「あ……」
フゥの風力は確かに以前よりも格段に上昇はしていた。
だが、敵を切り裂く程の風を生みだすまでには至っていなかったようだ。
「風の妖精さん……なんだかとっても、綺麗になりましたね」
「なんだか前見た時よりだいぶ変わってるわね……欲しいなぁ」
ミナやゆらちーだけは、フゥと俺がしでかしてしまった事を見て、柔らかな感想を言い合っている。
「ゆらちー、呑気な事を言ってる場合じゃないよ。足音がすぐ近くまで来てるって」
「って言っても、あれじゃあ敵を遠ざけちまったな……どうしようもないんだが、また撤退でもするか?」
ほんの少しだけ落胆の声色が交った様子で、
うん、見事に失敗しちゃった。
でも、まだやれるはずだ。
「いや……俺なら、届くかもしれない。フゥ、あそこまで風を届けることは?」
「あそこはちょーっと難しいんっ♪」
ふむ。
「なら、フゥがあの光に近付いていって、上から風を発生させて落とすことは?」
「でっきるん♪ でもータロんの
なるほど……MPの消費が激しくなるのか。
それならば。
「俺に行かせてくれ、ユウ」
「うん……? あぁ、あのドレスで? でも、タロはいいの?」
Lvの低いユウジだって、自分にできることを精一杯やり、階段を降りる時に身を呈して先行役をしてくれたのだ。
俺は固唾を呑んで成り行きを見守るRF4-youの横顔を見つめる。
女性もののドレスを着る事ぐらい、なんて事は、今更……ないはずだ。
俺だって、やれることはし尽くさないと。
このまま近寄ってくる巨人たちから、上手く逃れられる保証はないんだ。
ここで、俺が踏ん張らないと。
「おい、まさか」
ひらひらのドレス姿になる事をからかうのかと思いきや、
「タロ、それはやめておけ」
「なんだよ、いつもはからかう癖に。もう時間もないんだ、いくよ。コウは俺の援護を頼むよ」
「おい、待てって」
俺は
ドレスによる重力6分の1とフゥの風に乗って、みるみると上昇し『
「うわっ前よりも凄い力強さだよ、フゥ」
「フッフゥーンッ♪」
あっという間に8メートル近く飛翔した俺は、敵に攻撃を加えるべく姿勢を整えていく。
「タロ! 無茶はするな! 下に誘導してくれればいい!」
なぜか、
写真の説明通り、よーく見ると白い光の中には小人のような生き物がいた。
こちらが接近しても、特に変わった反応を見せるわけでもない……少しだけ罪悪感を抱いた俺だけど、今は仲間のピンチがかかっているので、背中を押す風の勢いのままに小太刀を『
「せいっ」
青白く発光する
こちらの意を察したのか、とっさに俺の振りかぶった刃をかいくぐった。そして、そのまま俺の下へと潜り込むように飛行し、今までにない程の光量を発生させた。それと同時にバチッと感電したような軽い衝撃を受け、俺は上へと弾き飛ばされてしまう。
「くっ、なんだ今の」
タロ HP12/80
今のは……衝撃波?
近づくと発動させてくる類の攻撃か?
「タロ!? 大丈夫か!?」
そして、下から更に俺へと追い打ちをかけようと、今度はあちらから接近してくる『
「フゥ! お願い!」
「はいちゃっちゃ!」
とっさにフゥにリクエストをし、『
相手にとっては予想外の反撃だったのか、フゥの風圧をもろに受けた『
「よし、その高さなら俺でも届く!」
そこへ、
フゥと
その隙に俺がフゥに頼み、上段から一気に下降して、小太刀を『
その一撃がとどめとなったのか、『
:『
:『
「やったな、コウ」
「おう。だがな、タロ。お前は無茶しすぎだぞ」
「フゥとコウがいたから、助かった」
「まぁいい。それより、ここから離れるぞ。人魂みたいなモンスターを倒した後でも、巨人たちが追いかけてくるようなら、一戦交えないといけない……」
そうして俺達は、その場から退散し、そそくさといくつもの通りを走り、しばらくは移動を続けた。
「やっぱり、あの発光するモンスターが巨人たちをボクらの方に誘導していたみたいだね」
地響きがだいぶ遠くになった地点で、
「そうだな……ここらで、俺達の今後の方針とパーティーリーダーを明確にしておきたいんだが、みんなはどうだ?」
「いいんじゃないかな」
現時点でのパーティーリーダーは夕輝なので、夕輝が納得するのであれば俺もと言った具合でコクコクと頷き、みんなも流れに乗って了承していく。
「まず、方針の方だが……俺たちはもう、タロが持つ情報がどれだけ大事なのかを目の当たりにしてるだろ?」
「『浅き夢見し墓場』
「そうだ。あんな現象は初めて聞くし、あれはタロあって発生したイベントに近い」
「タロ閣下の知識ありきであります」
「天士さまの恩恵に感謝します」
「そうだ……ここでは少なくとも、タロの意見や考えを中心に今後の方針をとっていく。それが最善だと思う」
素直に
「それには異論ないかなー」
ゆらちーの合意で、みんなの総意は決まった。
「次にパーティーリーダーだが、今はユウがいつも通りやってくれているが、今回はタロがやってみてはどうだろうか?」
「え、おれ?」
だが、この発言は予想外だった。
「そうだ。先程の戦闘で、ユウはタロを上空に行かせたが、あれは良くないと思う」
「でも、コウ。あそこでミナさんに遠距離魔法を撃たせる方がマズイでしょ?」
「もちろん、ユウの判断力は信頼している。あそこで派手にやったら、都市の上を泳いでいるクラゲやチョウチンアンコウの化け物に気付かれるかもしれないからな」
「だから、コウは屋内に行こうって提案してたもんね。屋内なら目立つ魔法も発動できそうだし」
そうだったのか。
あの戦闘のさなか、ユウはそんな事を意識しながらミナに魔法を撃つなと指示したのか。
「だが、タロを単独で、あの人魂に突撃させるのは上策ではないだろ?」
「まぁね。あれは失敗だったよ」
「じゃあ、タロが俺達のパーティーリーダーでいいな?」
「うん、ボクはOKかな」
「ちょ、ちょっと待って。俺はユウみたいに、戦闘中に咄嗟の指示なんて出せないから。これまで通り、ユウがパーティーリーダーをやってくれよ」
「いや、タロ。お前がやれ」
「いや、で、でもさっ」
みんなの安全を考えつつも、状況をしっかり判断した上でみんなを牽引していくなんて。
そんな事をこなせる自信が、俺にはない。
「うーん、コウ。だったら作戦を変更しよう?」
慌てふためく俺に、
すると
俺は二人のそのやり取りを見て、ハメられたと気付いた。最初から、この会話をするための流れ、前置きだったのだろう。
「ダンジョン探索における、現段階でのボク達パーティーの
「お、おう」
普通に嬉しいのだが……。
「キミの情報収集能力はすごく役に立つし、ボク達が生存する上で必要な知識を途中で拾ってくれるかもしれない」
「あぁ……」
「だから、キルされたら困るんだよね」
「早い話が、攻略の
「そう。ボクらが
「だから、さっきみたいな無鉄砲な行動をされると困るんだな」
「いや、でも」
「あの人魂みたいなモンスターが攻撃した瞬間に自爆するモンスターだったら、どうする?」
「それは……やばかった」
「だから、パーティーリーダーっていう責任を、リーダーという貴重な存在という意識を植え付けて、タロの生存率を上げてもらおうかと思っていたけど」
「そういうことだ。タロにも分かってもらえた事だし、リーダーはユウのままでいいか」
くっくっくと笑い合う二人。
きっと、親友たちは俺がパーティーリーダーをやれと言われたら困る事を知って、わざとからかってきたのだろう。
俺が何かやり返そうとすると、すかさず
「タロ。お前の生存が、俺達にとって最重要だって事を認識したうえで行動してくれると助かる」
本気でそう考えている事は伝わったので、俺はしぶしぶと了承するしかない。
「わ、わかりましたよーっと」
ここでスネたら、また
俺は憮然とした表情で従うことにした。
「でもブチかます時は、派手にやってくれて構わないぜ」
「タロには、なんだかんだ助けてもらっているからね」
「「我らが錬金術士殿?」」
親友たちが声をそろえて、そんなことを言ってくるものだから。
さっきの絡みは忘れてやろう。
「ふふん」
心なしか、満足げに鼻をすすってしまうのも仕方のないことだ。
頼りにされるというのは、嬉しいものだからな。
「はらはら、お三方はいと仲良きことかな」
アンノウンさんの呟きにはあえてスルーしておく。
決して、いいように親友二人に乗せられているわけではないのだ。
けっして。
――――
――――
「くるよ」
「静かにな……」
俺達はとある大通りの様子を窺える、曲がり角に待機していた。
何を待ち構えているかというと……。
衣服はぼろぼろで、肉が所々削げ落ちており、肩の骨など露出している部分があった。だが、その手には大きな斧をしっかりと握っている。
人魂……いや、
「巨人のゾンビ……?」
「あれはやばくねーか?」
「怖いです」
「死してなお、巡回任務を全うする姿は兵士の鑑ですな」
「やっぱりアンデッドがいたわね」
「
みんながヒソヒソと語る通り。どう見ても、あれは味方になりえない。
「あんなのに見つかったらと思うとゾッとするね……ここは危険を承知で、どこかの家屋に侵入してみよう。もしかしたら、あの人魂みたいなモンスターがいないかもしれない」
「他にも、この都市に関する何かが分かるかもな」
巨人ゾンビが大きな道を通りすぎた事を確認した俺達は、適当な家を選びその扉に手をかけた。
さすがは巨人の都市というだけあって、扉の規模からして造りが重厚だ。
その高さは大型トラックを丸々呑みこんでしまうトンネルよりもあり、おまけに両開き型の
つまり、重すぎて押してもなかなか開かない。
「めいっぱい押して」
7人がかりで、やっとこじ開ける事ができ、ズズズッと石と地面が擦られる音にビクつきながらも、一同は少しだけずらせた隙間に身体を滑り込ませていく。
「ふぅ……」
「さてさて、何があるのやら」
一息つく間もなく、警戒モードを維持しながら巨人宅へお邪魔する。
パッと見は何の変哲のない民家だった。
長方形の部屋には、暗がりの中にうっすらと浮かびあがる、テーブル、椅子、棚、ベッドなどの家具だ。だけども、一階建ての家のわりには恐ろしく天井が高く、人間にとっては二階建ての家と遜色ないスケールだった。
「何もかもが大きいな……」
椅子なんかはよじ登らないと座れないだろうし、テーブルの足だけでもここにいる誰の身長よりも高い。
「どうやら、何もいないようだな?」
家の規格がワンルームという至極単純な造りになっていたおかげで、探索は楽なものだった。建物内が安全と判断すると、少しだけみんなのまとう空気が和らいだ。
「正直、どうよ。あの巨人ゾンビは」
「あれは……手に負えないかもしれない」
「『浅き夢見し墓場』に出てくる白骨体とは違い、肉がついていたでありんすね」
そして始める攻略談義。
「ユウ、あんたはアレの一撃に耐えられそ?」
「あの大きさで……骨だけなら何発かは。でも、肉の質量が伴っての一撃だと、正直自信がない」
「ですよね……それに、あの巨人ゾンビさん、武器を持ってましたよ」
ミナの発言に、自然とみんなが沈黙してしまう。
「何か、弱点がわかればねー」
ゆらちーが自分の愛剣『大輪火斬』を抜き放ち、赤い刀身を眺めながらぼんやりと述べる。
弱点か……。せめてさっきの巨人を『古びたカメラ』で撮らえる事ができたなら、写真として情報を収集できたのだが、カメラのストロボでこちらに気付かれたら戦闘は避けられないし、そんな危険は冒せなかった。
「ユウ大佐、ご報告があります……」
巨人に関する情報をどうにか得られないかと、頭をひねっている俺達にRF4-youことユウジが声をかけてきた。
「小官は『
「ええっと、ずいぶん需要の低いスキルを取ってるね」
「ハッ! 色々、その……観察を! 敵情視察にもってこいのスキルかと判断しましたので」
「それで?」
「ハッ! この薄暗い部屋の中でも小官の目は、みなさんよりかはハッキリとモノを捉える事ができます」
「なにか見つけたの?」
「ハッ! そ、そこに……」
そう言ってユウジが指し示したのは……ベッドだった。
さっき、俺もチラリと見たけど掛け布団が何重にもかぶさっているだけで、特に注目するような点は見つからなかったはずだ。
そこへユウジが、そろりそろりと慎重な足取りで
ユウジやゆらちーもジャンプしたり、背伸びをすれば覗きこむ事ができるだろう。
ゆっくりと、ユウジは布団を少しだけめくりずらしていく。
「えぇぇ……」
「勘弁してくれ」
「げに、おどろおどろし」
「うっわー……」
「当初は……布団にほとんど隠れてしまっていたので、髪の毛のようなモノがはみ出ていると気付いた時は、何かの見間違いかと思っていたのですが……」
ユウジが淡々と説明していく。
「何かが寝てるの?」
俺の疑問にゆらちーが首を横へと激しく振る。
「タロちゃんは、あんなグロいの間近で見ちゃダメ! ミナちゃんもね」
「幼子には目に毒でありんすよ」
「巨人の死体だ」
小さな子供に悪いモノを見せないようにする母親じみた面を出す、ゆらちーやアンノウンさんを遮るように、
「それは、俺も見ておかないと」
「た、タロちゃん!?」
驚くゆらちーを
「タロは俺達の錬金術士だ。何か手掛かりが見つかるかもしれないから、見せておくべきだ」
「閣下の研究に、何かのお役に立ちませんか?」
そこへ
二人が了承してくれたところで、俺は脚に軽く力を込めてジャンプする。
ふわふわと室内を浮かび、改めてベッドの上を観察してみる。
さっきとは違い、ユウジのおかげで少しだけめくれた掛け布団の下には、肉が腐ったようにただれた顔面、髪の毛が激しく抜けおちた、見るも無残な巨人の顔が静かに瞼を閉じた状態で、ちゃんと枕の上に乗る事なくズレて横たわっていた。
「おおぅ……」
正直に言うと、今からでも動きだしそうな気配がしなくもない巨人の死体を見て、ちょっとだけ怖かったりもした。
真上から、その巨人のゾンビをじっくりと観察した後、『古びたカメラ』を取り出し、さっそく写真に収めてみる。
「あんな少女に死体の写真を撮らせるなんて……何かが間違っているわ」
ゆらちーの尤もな嘆きが響き、続いてパシャっとシャッターを切る音とともに、ストロボの光が一瞬だけ部屋内を照らしだす。
『
【〈闇月の騎士〉たちが永遠の力を手に入れるために、犠牲として支払う〈闇月の誓い〉を応用し、現世にその肉体と魂を留めさせている〈
:『
:撮った『
闇月の騎士とか、永遠の力とか。
興味深い情報に、俺の心は多少なりとも刺激された。
だけど……そんな事よりも、もっと重大なログの内容に気付き、嫌な悪寒が俺の背筋を駆け巡る。
つまり、今、目の前のベッドで静かに横たわっている巨人の死体は……倒せるわけで、死体ではない? モンスターってことか!?
そもそも、死体がなんでわざわざベッドに?
死んだのではなく、寝ているだけだとしたら……。
「まずいよ、みんな……こいつは」
「まずいぞみんな!」
手に入れた情報をみんなへと共有する前に、
部屋の様子が鮮明にわかると同時に……ベッドの上の死体が、掛け布団が
「あの人魂みたいなモンスターが入りこんだよ! ミナさん、すぐに魔法の詠唱に入って!」
わずかに開いた扉の隙間から、『
「みんな! ベッドにいた巨人の死体がっ! 『
「どうなってんだ!?」
悪態をつきながらも
月光を模した光を発する『
『
月に相反するものは太陽?
つまり、この場を乗り切るには太陽光が必要なのか?
俺は太陽の光を宿したアイテム、残り7個しかない『
『
「こうなったらやるしかない! 『アピール』!」
みんなを守るために、敵の注意を自分に引き付けるアビリティを発動したのだ。
ベッドから這い上がった巨人のゾンビは
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