第9話

女の子は戻って来て言った。



君は今何年生?



僕は短く「小3」と答えた。



そうなんだ。じゃあもしかしたら君の先生になれるかもしれないね。



「せんせいになりたいの?」


女の子は首を横に振った。



ならなくちゃいけないの。私は先生を殺したけれど、一生それを背負えないから。



女の子の口調は恐ろしく淡々としていて、表情も脱力していた。


僕は怖くなりながら言った。


「せんせいを、殺したの?」


女の子は少し俯いてから頷いた。



ええ、そう。そして、先生も先生の先生を殺した。



「どうして?殺したりゆうは?なんでせんせいは捕まらなかったの?」



自分の先生を殺した。だから先生になって生徒に殺される。そうすることで罪の意識から解放されて、その生徒が今度は先生になる。その連鎖が、この集落ではずっと続いてるんだよ。川の上流で突き落とすだけだから、誰がやったかなんてバレない。



そう一気にいうと、女の子は自分の手に顔を埋めた。



自殺だってできないのよ。大好きだったあの先生が、言ったのよ。お前には、生きて欲しいって。自分の手じゃ、その言葉を裏切れない。



僕はどうすればいいのか分からなくて、ずっと女の子の方を見ていた。


しかし時間が経ち、覚悟を決めると言った。


「じゃあ、あなたは僕に、生きてほしいなんていわないで。そうしたら、れんさが終わるでしょ?」



え…?



「僕とあなた、いや、『先生』で、終わらせよう?」



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