第5話

待ち合わせのバス停に着くと、まだ先生しかいなかった。


先生の着ているTシャツは日差しを反射して、白く燃えているようだった。


どことなく悲しそうな表情を浮かべる先生に歩み寄っていく。


「先生、おはよう」


あら、おはよう。早いね。


「はい。先生キャンプ楽しみですか?」


ええ。もちろん。


「…嘘つき」


嘘じゃないわ、本当に楽しみよ。


「だってこれから行くのはあの日、」


「おはよー!二人とも早いねえ!」


会話の糸はやって来たクラスメイト達によって、あっさり切られてしまった。


僕は最後に先生に耳打ちした。


「先生、今日の夜皆が寝たら会いましょう。場所は言わなくても分かりますね?」


先生はこちらから目を逸らしたが、小さく呟いた。


気づいてたんだね…。


と。



それから僕らはいつも通り笑った。


バスに乗って、クラスメイトと話をして、水を飲んだ。


「あちぃー」「カレーの材料傷まないかな」「ごめんそれ取って」「あとどんぐらい?」


河原まで歩いて、テントを張って、食事をした。


「長くなぁい?」「金具足りないんだが」「切り方おもろいな」「お前の少なくね」


川で泳いで、釣りをして、昼寝をした。


「涼しいわー」「今魚見えた!」「ゴーグル忘れた…」「眠くなるね」



でも、目が合う度に先生は気まずそうに下を向いた。

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