パルマちゃんの罠。
《止めて下さい、アナタに興味は無いんです》
《“そんなに怯えなくても大丈夫、ほら、ちゃんと薬が有るもの。王家の紋入り、正式なお薬よ”》
ウチのルツを誘わせるとは。
流石、低能パルマちゃん。
『“あの組み合わせの方が似合うって、君も分かってるでしょう?”』
そう、この人は転生者、魔力もそう多くは無い。
転移者かもと警戒していたけれど、ルーマニア語が全く理解出来ない。
演技で無ければ、ね。
「“残念だけど(私以外)ダメなのよ、あの子”」
『“あぁ、それで。成程、なら君の単なる護衛なんだね”』
「“でも、そう認めたら、ねぇ”」
『“そうだよね、本当に君に魅力が無い事を認める事にもなるし。分かるよ、彼の気持ちも君の気持ちも”』
凄い、そんな事を一言も言って無いのに、自分の都合の良い様に解釈する。
素地も何もかも微妙ね、パルマちゃん。
けど、無様にも蹂躙されてしまった王家の方が、もっと微妙よね。
「“それもだけれど、ね、同性愛ってアナタには理解出来てるかしら?”」
『“あぁ、勿論、そうか。マリアンヌ、引き上げておくれ”』
《“あら残念、良い男なのに、またね色男さん”》
《やっとですか、助かりました。もう下がって良いですかね、化粧の匂いと香水で頭痛がするので》
『“彼、拗ねてるのかな。にしても男が良いなら早く教えてよローシュ”』
「“まさかパルマ公がこんな可愛い手を使うと思わなかったんですもの、それに、私に魅力が無いと仰ったのはパルマ公よ。てっきり安心して下さってるとばかり、けど心配して下さったのよね、ありがとうございます”」
『“ぁあ、勿論、試させて貰ったんだよ。全ては君の為に”』
サイコパスにも便利な装置よね、この手の社交辞令。
「ルツ、アナタは男が良いのよね」
《あぁ、はい》
「“私も見てみたいわ、あの子へ宛がう男の子”」
『“成程。セバス、ウィリアムを呼んで来ておくれ”』
あぁ、楽しみ、どんな可愛い子が来るのかしら。
とか期待してた気分を返して欲しいわ、何でガチムチマッチョなの。
「“まぁ、随分と鍛えてらっしゃる方だけれど”」
『“俺の1番のお気に入りだからね”』
「“まぁ、パルマ公がそんなに理解が有る方だなんて、流石、どちらもこなすのよね?”」
『“嫌だなぁ、あんなのに入れたって面白いワケ無いじゃないか、それに意味が無い。彼らは子作りの為の射精道具、どんな不能でも射精させる為の道具なんだから、この俺が入れるワケ無いじゃない”』
「“あぁ、けどあの子も私も好みじゃないわ、もっと可愛らしい子が良いのだけれど”」
『“しょうがない、特別に紹介だけはしてあげるけれど、手出しはさせてあげられないよ。王族用に仕込んで有る特別な子なんだから”』
「“ありがとう”」
なのにパルマ公は触られ慣れて無い。
不思議ね、何かしらこの違和感。
『“失礼します”』
あら嫌だ、本当に可愛らしい子。
可哀想に、すっかり怯えて。
「“大丈夫よ、手出しはしないわ”」
ニコって。
可愛い。
『“君も王族に近い位だって言ってたけど、この位の子を宛がって貰え無い時点で、寧ろ察するべきだよ。どんなに恩が有っても、正しい評価をしてくれる場所に居るべきだよ”』
「“けど、それはアナタもでしょう、あの子を私にはくれないんですもの”」
『“似た子ならあげるよ、けど俺とちゃんと家族になってから”』
「“妾でも家族扱いしてくれるのね”」
『“それは勿論だよ、俺は本当に君と家族になりたいんだ。けどね、権力を維持するには、どうしても正妻にはココの高い爵位持ちが必要なんだ”』
「“国を支える為には然るべき行為ですわ”」
『“うん、やっぱり真の理解者はローシュだけだよ、傍に居てくれローシュ”』
凄い、鳥肌。
「“そう焦らないで下さい、まだ出会って数日なんですし、奥様にも根回ししなければいけないでしょうから。ね?”」
『“そうだね、ありがとうローシュ、コレからも俺を支えてくれ”』
「“どうぞ(神の)御心のままに”」
そして可愛い子をゲットし、部屋へ。
『ローシュ、その子は?』
「貰った」
《あぁ、そう言う事ですか》
『賄賂、愛人にと』
『へー』
「“この人達は何もしないから大丈夫、先ずは私達の言葉が覚えられるかどうか。ちゃんと言葉が分かれば、アナタの嫌がる事はしないし、ご褒美も上げる”」
《“本当ですか?”》
「“勿論、じゃあ先ずは、嫌な事は何かしら?”」
《“お尻に指や道具を入れられるのは嫌です、それから男に入れるのも、ぅう”》
「“あぁ、それが嫌な事なら、ご褒美は何が良いかしら。お菓子?お肉?それともお馬さんかしら?”」
《“お母さんとお父さんに会いたい”》
「“そう、それは後で大きなご褒美としてあげるわ。他にもう少し小さいご褒美、飴はどう?色んな味がするのよ”」
《“この色は?”》
「“レモン”レモン、“イチゴ”イチゴ、“コレはミント、ミントは分かる?”」
《“知ってます、でもスースーするのは嫌い、良くお尻に塗られるから”》
「“あぁ、じゃあコレは無しで。オレンジはどう?甘酸っぱくて美味しいわよ”」
《“コレ“イチゴ“食べてみたい、です”》
「“あら上手、良い子ね”イチゴをどうぞ、はい、あーん」
可愛い子が、あーっと素直に口を開けて。
何か、コレ、変な性癖が生まれそうだわ。
『ローシュ、そんなにあの子が気に入った?』
「何でそうなるの?」
『今日は遠慮無しだったし、ちょっと違ったし』
「一瞬、食べちゃいたくなったのは認めるわ、だって可愛い小鳥みたいじゃない?」
『アレは猛禽類になる前の雛だよ?』
「そう分かってるからこそアーリスに八つ当たりしたの、過去には戻れないし、変えられない過去の事だから」
『僕はどうしたら良い?』
「ちょっとは粗末に童貞を捨てた事を後悔して、それを子供達に伝えてくれれば十分よ」
『嘘、出来たら過去を変えたいでしょ。僕は変えたい、ローシュの初めてを食べたかったし、初めてを食べて貰いたかった』
「今は、ね」
『好きだよ、愛してるよローシュ、ローシュ以外は全部泥。泥を舐める方がマシ、美味しいローシュ、大好き、愛してる』
ネオスも素直になれば良いのに。
素直に言わないとローシュには永遠に伝わらない、僕だってこれだけ素直に言っても、全部が伝わってないかもって不安になる位なのに。
《本気でアナタを妾にする為に奔走してるそうですね》
「ね、お陰で探り易いわ。だから程々にしてルツ、もうすっかり日が登っちゃう」
《あの子の面倒はネオスが見てますし、アーリスも付き添いでイタリア語の勉強中ですから、大丈夫ですよ》
「でもよ、勿体無いわぁ、良い天気なのに」
《では歴史を踏襲して、中庭でしましょうか》
「良いのか見られても」
《服を着て、なら見られませんし。口もキスで塞ぎますし》
「ルツ、エロが過ぎる」
《嫌いじゃないでしょう、私もエッチな事も》
「いや、実は」
《強がるなら本当に中庭でしましょうかね。好きなんですよ、アナタが必死に声を我慢する所とか、気を逸らそうとしても堪えられなくなる所とか》
「もうサド侯爵が生まれてしまったか」
《かも知れませんし、試してみましょうか、先ずはベランダで》
「バレちゃうわよ、実は男色じゃないって」
《ネオスから聞きましたけど、見事に明言を避けて勘違いをさせたそうで。なら私も当然心配すべきですよね、本当に嫌だと言ってるのかどうか、本当に良いのか》
「見られるのは本当にダメ」
《あの可愛い子にも、ですか。実は勉強なんてせずに、私達の行為を見て、興奮しているかも知れませんよ》
「待ってルツ」
《確認させてあげませんよ、邪魔をしては可哀想ですからね、勉強にしても手淫にしても。男の子は放っておくのが1番、万が一にも嫌なら見なければ良いんですよ、無理にアーリスが見せるワケが無いんですしね》
「でも」
《ダメです、私の相手をする日でしょう。それともあの子が食べたいんですか?》
「そん」
《どうでしょうね、可愛いとは思ったでしょう。ローシュの好みは私が1番知ってるんですから、ね。大人しく食べられて下さい、見られていても良い様に、あの子には良い事をしてるんだと思って貰わないといけませんから。ねぇローシュ、綺麗ですよ、愛してます》
直ぐ隣の使用人部屋でネオスに仕事をさせ、その更に隣にアーリスとあの子に語学の勉強をさせているんですが。
見てますかねネオスは、鍵穴が大きくて監視がし易い、と教えてあげたんですけど。
早く自覚した方が楽ですよ。
それか諦めるか、なんですけど、お勧めはあまり出来無いんですよね。
「単語、かなり覚えられたのね」
《はい》
『ご褒美リストも作れましたので、どうぞ』
「ありがとうネオス」
《わりがとうネオス》
「惜しい、ありがとう」
《ありがとう》
「そうそう、ふふふ」
『あの、では、失礼します』
《あぁ、待って下さいネオス、少しお話をしましょう》
この前以来、ルツさんは私の心配をしてくれている。
けれど、あんな事を仕向けたのも事実で。
『何でしょうか』
《どうでしたか、汚らわしい行為に見えましたか?》
『私が見たって前提なんですね』
《あの書類のインクはすっかり乾いていますし、提出するにしても様子見位はしたでしょうから》
『すみません』
《いえ、敢えて見ても良い様に仕向けたも同然なんですから、構いませんよ》
私は最初
けれども情欲、性愛を感じてしまい、
『それでも、私は』
《では嫉妬も独占欲も感じない、と》
『いえ』
《なのにギリシャ人である君がエロスを否定する、そしてあの可愛いらしいクピドーに先を越される。私のプシュケーが良い子だと、物語はその様になるのですね、成程》
「黄金の驢馬」の挿話、エロース神と人間の娘の物語「愛と恋の物語」。
ココでヴィーナスと呼ばれる、愛と美の女神アプロディーテへの信仰を奪う程の美しさを持ったプシュケーと呼ばれる娘を、息子のクピドーが貶め様として恋をしてしまった。
そして人間の誰からも愛されなくなってしまったプシュケーを助ける為、アポロン神が神託を授けた。
<山の山頂へ娘を置き、全世界を飛び回り神々や冥府でさえも恐れる蝮のような悪人と結婚させよ>
誰もが悲しむ中、プシュケーは山頂から
素晴らしい音楽に極上の綿や絹の衣、食べ物、そして夜にのみ寝所に気配を表す夫。
それらに満足していたが、どうしても家族が恋しくなり、姿の見えぬ夫へと懇願した。
<どうか家族に合わせて欲しい>
そして夫は姉2人だけに会う事を許可し、宮殿へと招いたが、プシュケーの暮らしに嫉妬した姉達は。
<太らせてから食べる気だ、寝ている隙に殺しておしまいなさい>
愚かなプシュケーは姉達の言葉を信じ、夫の寝所へと蝋燭を持って入った。
だがクピドーのあまりの美しさに驚き蝋燭を落とし、クピドーに火傷を負わせてしまった、そしてクピドーはプシュケーの背信行為に怒り飛び去った。
そうして音楽も響かなくなったので辺りを見渡すと、そこは見慣れた家の近くの原野。
そこで、やっと自分が姉達に騙されたと気付いたプシュケーは姉達の元へ。
<クピドー様がアナタ達とも結婚し、宮殿で暮らしたいと言っている>
そう伝え断崖から身を投げ出させると、姉達は
その足で探し回るも見つからず、
<先ずは母であるヴィーナスへ許しを請うべきだろう>
そう言われたが、恐ろしさのあまり
<傷付け、逃亡した者は匿えない>
そう言われ、やっと、プシュケーはヴィーナスの神殿へ。
そこでプシュケーがクピドーに相応しいかどうかの試練が有るのだが。
プシュケーはクピド-や、クピドーが可愛がっていた
果ては忠告を無視し、空けてはならないヴィーナスの為の箱を開け、眠りについてしまった。
それでもクピドーの目は覚めず、ユピテルに説得を頼み、1つの契約を結んだ。
<良い女を紹介するなら>
そしてネクタルを譲り、クピドーがプシュケーに呑ませ神の仲間入りをさせる事で、ヴィーナスに無理矢理認めさせ。
『私は、悦楽、快楽を知れば愛が愚かなモノに成り下がってしまう。そう、学びました』
《成り下がる、愚か。少し解釈違いですが、そう思うのも分かります、愛と心の物語のプシュケーは愚かに書かれていますからね》
『はい』
《ですが、彼の様に幼かったなら、仕方無いのでは?》
彼、とは。
『なら、はぃ、かも知れませんが』
若いなら、何も知らないなら。
入り乱れた穀物倉庫で呆然とし、座り込んだりしてもおかしくは無い。
助言が無ければ羊の毛を1つ取るのも、容姿を気にするのも。
けれど。
《君の古傷を抉る気は無いのですが、ファウストと似た様な年の頃の出来事なのでしょう》
『どうしてソレを』
《君の為ですよ。君が何を嫌がるか、詳しく話して頂けなかったので、ご家族から聞き出しました。泣いてらっしゃいましたよ、守れなかったと、未だに後悔してらっしゃいます》
『ですが』
《そして、もし良ければ、ローシュの傍に置いて欲しいとも懇願されました。あの子が着いて行くのなら、例えハーレムであっても、と》
ハーレム。
私が最も愚かしいと思っている家族の形、家族の形とすら言えない様な歪な状態。
『ハーレムを軽蔑はしませんが』
《いえ、なさっているでしょう、愚かだと。ですが良いんです、独占出来る程度の小さな水場を理想となされば良い。君がどう思おうとも、我々には問題無い、君も私達も自由なのですから》
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