除毛剤って、どうなってますかね。

『あぁ、アンダーヘアーの事ね』


「ココの方達は自然に、そのままだとは聞いてますけど。ぶっちゃけ、髪と同じ位に丈夫でして、それこそ脇も」


『そうね、ワックス脱毛にしても大変だものね』

「そうなんです、特にコレからの時期、気になってしょうがないんですよ。色も濃いし、目立つし」


『ふふふ、ならコチラでは薬草と魔法で。あの子には薬でどうにかならないかを、研究させましょう』

「ありがとうございます」


『良いの、コレもいずれは疫病対策として、いつか研究すべきだったのだもの』

「あぁ、幸いにも噂は聞いてませんが。確かに、虱、蚤、南京虫と怖いですし」


『そうなのよ、もう、本当に怖いわ』


「寧ろ、髪は付け毛として保存、とかはどうでしょう。ぶっちゃけ洗う手間が面倒なので、ココ位に切って、纏め上げて、後付けにする」


『あぁ、カツラと違うモノね』

「そうそう、万が一にも丸刈りになっても、ある程度長くなれば付けるだけ。体が弱った時でも、お洒落が楽に出来る。妊婦にも、妊娠で毛が減る子も居るから、先に髪を切っておけば洗うのも楽」


『今の人の技術でも充分に可能。良いわ、素敵よローシュ』


 そうして除毛剤からエクステの話になり。




《姉上、王妃からの礼だ》

「ほう」


 姉上が喜ぶ物は、実は凄く限られる。

 今回は良く鞣されたウサギの毛と、肉。


 肌触りと味。

 着飾る事を嫌がるが、今回の様に着飾る事は否定はしない。


 毛の髪飾り、製法も簡単で直ぐに広まった、王妃の考えとして。


 提案者は姉上なのだが、広める際にも面倒だから、と。

 半分は本当に面倒で、半分は優しさや気遣い。


 今までも、全て、優しさや気配りだった。

 その事を、やっと王妃が受け入れた。


《洗髪に入浴にと、腹がデカいと面倒で、その後の事も考えてくれていて。助かった、ありがとう、と》


「何故、ご本人様からでは無いのか?」

《姉上に敵意を向けてた事を恥じてるんだ、それに、気を使うだろうからと。顔を合わせ辛いんだと》


「気にしないのに。つか大変だな、君に全く興味が無いと言うのに」

《本当にな、身内に手を出すのはそれこそ禁忌だっつーのに》


 それとコレ。

 俺に全く魅力を感じていない事も、やっと、ルツとアーリスとの仲を見て信じてくれたんだが。


「にしても、アルコール漬け、剝製にも利点が有るとはね」

《アレは本当にな、悪い、悪しき見本だ》


 ウズラの近親交配の果ての、奇形。

 妊娠率低下を示す書類、剝製とが一緒に保存されている、それこそ各州に。


 偶に出る近親相姦の事件が出る度に、定期的に日の目を見る事になっているのが最高に不愉快だが。


 だが、コレこそが問題だった。


 どうしても、王妃には外見が違い過ぎて身内だとは思えなかった。

 しかも自分が相手を魅力的だと思うからこそ、当然の様に他の者も配偶者を魅力的だと思う筈だ、そう奪われる心配が有ったのが。


 やっと、姉上を自分とは違う女なのだ、と。


 違いを認めないのなら、果てはローシュが居た世界で言う争いの火種、差別に繋がると。

 何とか諭せた。


 危うく、本気で王妃を変える事を考えたんだが、何とかな。

 うん、俺も助かった、変えたくは無かったんでな。


「他にも増やそう、他と違うのを」

《あぁ》


「ただ色が違うのはダメだ、ウチの方では白いのは神の使いだと言われてるから、真っ黒とかもダメ。手を出したら不作が続く、一部の者にだけ伝えて探させてくれ、敢えて作り出す馬鹿が出たら困るから」


《おう。それと、俺からも何か贈らせろ、王として》

「アレ、新造の家紋、印章の費用で良い」


《だー、ほら、何か欲しがれよ》

「ルツとアーリスから貰う分を取っといてんの、そう欲しい物が無いから。王からは実用品で結構、それか金か、庇護で充分よ」


《成程な》

「じゃあもう良いかね、誤解が解けたにせよ、奥方に心配掛けたく無い」


《おう、助かる、じゃあな》

「はいよ」


 居ようが居まいが、姉上は常に気を使ってくれる。


《ほらな、王妃よ、あぁ言う女なんだよ姉上は》




 賜ったウサちゃんは、新しい室内履きへ。

 モフモフ、すべすべ。


 足の指の間が堪らん。


「美味しいし、肌触りも良い、コレは素晴らしい生き物だ」


《シャモアにミンク、テンの養殖の次に、ウサギですか》

『オオヤマネコは諦めたの?』

「いや、本当はココで育てたいですよ、触りたいですが」


『ごめんね』

「いや、生きてる子は怪我するかもだし、怯えたら繁殖に差し支えるかもだし」


 人には匂わないホルモンが竜から出ているのか、ほぼ全ての動物達に怯えられてしまう。

 竜の寵愛の対価らしいが、そもそも飼うなんてのはあまりにも贅沢だし、それこそ視察に回るのでね。


 うん、死んでる皮膚でも良いんです。

 お肉は美味しいし、触ったら繁殖に問題が出るかどうかは、まだ未知数だし。


 コレでええねん。




《残酷、ですか》

「そう思う者が、以降に来る場合も有る」


 毛皮、それから食用の為の養殖に関して、以降の転生者や転移者に対して情報制限をする様にと。


《理由は分かりましたが、理屈さえ》

「その前に悪だと断罪して来るかも知れんのだ。人造、人工の毛皮が無い、代替品が無いにしても。感情論ゴリ押しの者が来て荒らされたら困る、しっかり見極め、難しそうなら情報封殺。徐々に解禁か永久封印かは、様子次第」


《アナタの時代でも、ですか》

「だからこそよ、高潔にも死を選ぶかも知れないし、自分が繊細だと主張する事で都合良く他人を動かそうとする者が居てもおかしくない。知識とは諸刃の剣、自分が凄い善人だとは言わないが、想像を絶する悪人は居る」


《無自覚に、無意識に》

「そう言う人間を警戒してた部分も有るんでしょう?」


《半々ですよ、それこそ流行り病の確認が最優先でしたし。あぁ、他国がそこまで警戒しているかは、確かに》

「そのまさか、が起きて魔女狩りが発生して、今でも他国ではくすぶり続けてるんだし。移民にも、暫くは知られない様にした方が良いと思う」


《分かりました、なら特区を作り出した方が良いですかね》

「そうね、職業訓練所にもなるでしょうし、試験に受かったら次の場所へ。その後は好きに選んで貰おう、住処を」


『それはちょっと、反対したいわ』

「アリアドネさん、何で?」


『目新しい子に釣られて、相性の良い子を逃す、なんて事をされたら本末転倒だもの』

「あぁ、なら占いを使いましょうか、分かる範囲での生年月日から相性の良い地だけを勧める。勧められていない地で不幸が起こるだろうけど、良いのか、と」


『良いわね、それ、私にやらせてくれるのでしょう?』

「勿論、姫様は人間大好き過ぎだし」


『過ぎかしら?』

《いえ、私は凄く助かっていますので、問題は無いですよ》

「ルツに有る事有る事吹き込むんだもの、私はちょっと困ってます」


『あら、嫌だった?肌触りの良い下着』

「もー」

《程々でお願いします、貴女様にでもこの可愛い姿を見られるのは悔しいので》


『はいはい、ご馳走様でした』


「もー」

《何も気にせず、私に食べられてしまわないから、心配して下さってるんですよ》


「分かってるが、気にさせてくれよ、本当に恥ずかしいんだから」

《アナタで言う毛皮と同じでしょう、嫌いでは無いんですけどね》


「毛皮は口には入れません、歯に毛が挟まってるの見たら好意すら吹き飛ぶかも知れんぞ」


《成程、ふふふふ》


「笑いごつじゃなかとよ」

《アナタが髪を食べてしまってる姿を見るのは、寧ろ、凄くそそるんですけどね》


「けど陰毛はアカン、嫌、無理」

《剃れば剃ったでチクチクしますしね》


「あ、君のは別に良いのよ、コッチの問題で」

《鼻が痒くなる、と王妃様からお伺いしたので》


「それは、弟の性行為を知るのはちょっと、キツいな」


《ですけど、何しろ経験が無いもので》


「だからって、もう、教えるから聞いて回るな」

《無理ですね、全てを教えてくれそうにも無さそうですし。アーリスの情報を使うのは、お互いに嫌でしょうし》


「なら、もう少し、それこそ書記官位の遠い人に聞いてくれん?」

《アレが間違ってもアナタに懸想するのが嫌なんです》


「あぁ、お互いに難儀やね」

《そうですね》


 ローシュが今着ているブリオーの下には、シルクで織り上げられた下着が。

 着心地が良いからと、特別な日意外にも身に着けて頂いている。


 触る方も感触が良くて、つい触ってしまうんですよね、綿の布越しでも。


「この流れで発情する?」

《エルフの血だけなら起こらない事だそうですけど、精霊と人間の血も入ってますので》


「3月兎の血も入ってるのでは?」

《発情期の兎ですか、そう風流な所も好きですよ》


「だからコレは知識の流用で」

《私には難しいですね、もうしたくて堪らないので、そればかり頭に有って出ても来ませんし》


 真っ赤になって、心臓が飛び出てしまいそうな程に跳ねているのを、抱き締める。

 コレはコレで、確かに、コレを暫く楽しむのも良いかも知れませんね。

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