どうして。

《頭が良い所ですかね》

「ココの人間を基準にしてない?」


《はい》

「はいじゃない」


《だとしても、です》


「そもそも、予め答えを持ってたから即答出来てるだけ、苦手分野や新たな問題を出されたらバカが露見します。その証拠に脇が甘いので、攫われ襲われたんですから」


《アナタへのメリットを提示させて貰えませんかね》

「追々で」


《バカならココで条件を言いそうですけ》

「駆け引きが嫌いな場合も、そうするんじゃないですかね」


 こうして会話が続くのも楽しいんですが。

 それを分かって頂く為には、他の女性と相対している様を見せるべきなのかも知れない。


 けれども過度な嫉妬や誤解を招く恐れが有って、嫌なんですよね、その選択肢たけは。




『ローシュさんとの駆け引きに、女性を使うんですか?』

《その案以外に何か有ればと、相談させて頂いてるんです、リスクが大き過ぎですから》


『あぁ、そこまでの事になると、ローシュさんの嫉妬がどう出るか分からないですもんね』

《はい》


 本気なのも、好きなのも分かる。

 けど、確かに。


『どうして、そんなに、何処が好きなんですか?』

《孤高で高潔で面白くて、真面目でお優しい。頭も良いのに高慢とは縁遠く、素晴らしい、とは思いませんか?》


『思います、けど、もう失敗したくないんですよ。まるで引き裂かれた時を思い出すみたいに、昔の事を話してたので』


《今のアナタの様に、ですかね》


『です、けど』


 だからこそ、時間を掛けて欲しい。

 それこそ僕とは違い、時間は有る筈なのだし。


《恋をした事は?》


『ぁ。片思い、なら』

《なら、早く手に入れたいとは思いませんか?》


『僕は、思うだけで、見てるだけで良かったので』

《ソレを超えると一気に来ますから、是非楽しみにしてて下さい》


『どんな、感じなんですか?』

《性欲が芽を出します》


『せ、そこですか?』

《あ、まだ無いですか?》


『いや、うん、はい』


《男性こそ、緊張が大敵だそうですからね》

『あぁ、王様から聞いたんですね』


《はい、ローシュから教えて貰った、と。そう博識な所も好きなんですけど》

『褒めるには微妙な部分ですもんね』


《それも、なんですが。聞き出して頂けませんかね、私では警戒されて本音を引き出せませんし》


『引き出せなかったら?』

《なら強引な手を使おうかと》


『そう僕にまで駆け引きをしても』

《必死さを見せるのも必要だと思いませんか?》


『ぅ』

《では、宜しくお願いしますね》


『ぅう、はぃ』


 どうしよう。

 あぁ、王様に相談しよう。




《あはははははははっ、ひひひひひ》


 もう、凄い必死じゃん、ルツ。


『もー、笑い事ですか?!』

《いや、うん、すまんすまん。ふふふふ》


『もー』


 いや、だってあのルツが、だぜ。

 もう言い触らしてやりたい位に面白い、あのルツが珍しい事を言い出してるぞーって。


《はぁーぁ、うん、で先ずはお前はどうしたら良いと思うんだ?》


『先ずは、ちゃんと話し合うべきだと思います。それこそローシュさんは逃げないで、ルツさんは思ってる事を全部話す』


 それだけで姉上が落ちるか、と言えば答えは多分、違う。

 ましてや、なし崩しなんて狙った日には、逆効果だろう。


 それこそ順序、段取りが必要だろうな。


《話し合わせるにしてもだ、冷静に話せる環境を整えた方が良いな》

『はい、ですね』


《それから……》




 寝る前に、クーちゃんから話が有るって。


「ルツに、ワシの性欲について聞かれた?」

『はぃ、それで、強引な手を使うかもって』


「いよいよだなおい」

『あの、ココで寝ますか?』


「それもそれで。君は性欲どうなのよ、物理的に溜まるワケだし」

『え、いえ、大丈夫ですよ。全く、そんな気分になれないですし』


「ですよね」

『あ、ローシュさんの問題じゃなくて、それこそ異性ですけど、緊張もしますし、家族ですから』


「やっぱり年が離れてるし、似ても無いし、ハトコ位かね」


『兄弟姉妹は嫌ですか?』

「いや、顔面偏差値がね、高低差で耳キーンしちゃうわよ」


『そう、そこまででも』

「はいはい、身内フィルター身内フィルター」


『拗ねますよ?』

「ごめんごめん」


『あ、それで』

「さっきの事ね、流石に大丈夫だべ、妊娠させるとかは流石にアーリスがキレるだろうし」


『あぁ、けど、今日はどうしますか?』


「巨体のアーリスが窓越しに居るし、大丈夫やろ」

『けど、何か有れば直ぐに逃げ出して来て下さいね』


「おう」


 心配し過ぎやで。


《油断してますね?》


 組み敷かれたが、だから何だと言うのだ。


「いや、したきゃすれば良いが、それで好かれると思うなよ」


《した程度で好きになって貰えるとは思ってませんよ》

「なら結構」


《今日は寝台を交代しましょう、以降は交互に、で。でなけれなどきませんよ》

「おう、交代で、このまま寝ます。おやすみルツ」


 ほら、大丈夫。

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