第4話 4時間目

「・・・・・・婚約破棄する!」


しまった。

モブとしてあるまじき痛恨のミスをしてしまった。

マイモブダーリンと、このカナッペ美味しいね、なんてキャッキャウフフしてしまっていた。

断罪の最初の方、聞いてなかった。

まだ間に合うか?

マイモブダーリンの腕をぐいぐい引いて人波に合流する。


「どうしたの?グロリア。踊る?」


もう、マイモブダーリン空気よんで。

でもそんなとこが大好き。


乙女ゲームのクライマックスである。

お、ヒロインが顔がいいヤツらに囲まれてんな?

逆ハーか?

wktkが止まらない。

逆ハーなんて諸刃の剣よく持つ気になったな、豪胆だなヒロイン。


さて、お馴染みの夜会での断罪劇であるがここでのモブはとにかく空気になること一択である。

第一級底辺モブである私とマイモブダーリンは今棒人間になっていることだろう。

ヒロインが転生してようが、悪役令嬢が転生してようがモブには一切関係ないのである。

すんなり断罪されようが、逆転断罪になろうがモブには関係ない。

モブにはモブの人生があり、メインステージの出来事は雲の上の話である。

私が興味あるのはマイモブダーリンとの今後の生活だけなのだ。


「なんかとんでもないことなってるね」


なんて小声で言うマイモブダーリンを愛し続けるのみである。

モブの人生はメイン劇場のように大きな山もなけりゃ谷もない。

だけど、その穏やかな日常がどれほど尊いものか。

愛する人に愛され、なにげない日々を共にすることの幸せ。

モブとしての立ち回りは綱渡りの連続である。

立ち回りを一つ間違えればメインに抜擢されるかもしれないのだ。

準モブであるベンチ入りすら避けねばならない。

いつまでも観客席でいたければ注意深く回りを観察する。

モブのステージは広大だ。

モブがモブである限り、世界は割と無限大に広がっている。

メインステージが輝いているのはそのバックにいるモブステージがあるからだ。

私はそのモブステージが好きだ。

波乱万丈より平穏無事が好きだ。

ゲームはクライマックスを迎えたが、私はモブとして生きていく。

もし、君がモブに転生したならばメインの扉を開けるのは案外簡単だ。

ただ、その扉を開けてしまうともうモブには戻れないと覚悟してほしい。

その先の人生が波乱に満ちた人生だとしても自己責任である。

ただし、メインになった君を私は応援する。

モブとして賑やかしに全力で協力しよう。



モブとして生きる、これはある意味難易度MAXなのだ。



      « おしまい »



見つけてくださってありがとうございます。

私自身、モブもヒロインも悪役令嬢も活躍するお話しは大好物です。

最後まで読んでくださってありがとうございました^^*

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