おばあちゃんとのお昼
「人は死んじゃうとお星さまになるってホント?」
「ああ、本当かもしれんな。だが、手前は妖怪故な、死なぬのだ。だから、詳しいことは知らぬ」
「ふ~ん。ま、私もまだ死んだことないからわかんないんだけどね」
居間でおばあちゃんが作ってくれた胡瓜をバリバリ食べながら、だべっている。
「おばあちゃんって、本当に死なないの?」
「ああ、死なぬ。死ねぬ。それが、ありがたくもあり、憎くもある」
「ふ~ん。じゃあさ、おじいちゃんの刀で斬られても死なないの?」
「左様」
「あれさ、けっこう痛いんだよ?」
「知っておる。大半の人なら、一振りで即死だろう」
「試しに手首を切ったら、半年傷跡が残っちゃって」
「何故に、己が手首を切った」
「う~ん、なんとなく?」
自分でも、なんであの時手首を切ったのかよく覚えていない。調子が悪かったからなのだろうか。人目を盗んで切ったのがおじいちゃんにバレて、ひどく叱られた。
「然もありなん。可愛い孫の手首を自分の刀で傷つけてしまったのだ。それ故か、一時期宗近が落ち込んでいたのは」
「えへへ、ごめん♪」
ウィンクをしながら首をかしげ、握りこぶしを頭の上に付けて、私はそういった。
本当に、あの時はなんで手首を切ったのだろう。まだ十歳かそこらへんだったから、覚えていないのも、無理からぬところなのだろうか。
「……、其許も、ただならぬところをくぐって、生きてきたのだな」
おばあちゃんはそういうと、胡瓜のおかわりを持ってきてくれた。
捨て子だったのを、おじいちゃんに拾われたのが、九歳の暮れ。っていっても、この話も本当かどうかはわからない。その頃の記憶が、まったくといっていいほどないから。
審神なんとかって美人さんが、おじいちゃんに特別に許可を出して、私を保護した云々。それ以上のことは、一通りきいたけれど、あまりよく理解はしていない。
気がつけば、私の周りには、家族がいっぱいいた。
「いつか時が来たら、あなた様に起こったすべてのことをお話致します」
審神なんとかって美人さんは、ちょくちょく私の家に来て、そういっては、おじいちゃんの胸にすがりながら、涙で頬を濡らしていた。もっと早くに駆けつけてれば、ともいっていた。
子どもの頃から、ずっと繰り返されている光景。
私は頭がよくないから、いつも、泣いている美人さんの頭を、優しく撫でることしかできなかった。
そして、撫でる度に、よくわからないけれど、とにかく、いま幸せだったなら、すべてはそれでいいのかもしれない、という気持ちに包まれるのだ。
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