おじいちゃんとのお昼
おじいちゃんが浴衣姿で庭の手入れをしている。いつだって、おじいちゃんは和服だった。この時期は、害虫やら雑草があるので、手入れが欠かせない。
「お、またハチの巣だ。今年は元気だな」
そういって、おじいちゃんは器用にハチの巣を取り除き、ゴミ袋へ放り込む。
「いたたた」
私も、草むしりをしていたけれど、乙女には腰にくる作業だ。
「いいところで一休みするんだぞ。あまり無理をしてはいけない」
「へーい。でも、あとちょっとだから」
せっせと草をむしる。むしられた草からは、アリや名前のわからない虫が驚いた様子で次々と散っていった。
私みたいな小さな女の子でも、アリにしてみればゴリアテだ。
天変地異が起こっているように感じるのだろう。
「なんだか、いけないことをしてるみたい」
「なら、このままなにもせず、アリや他の虫が住みやすいようにするか?」
「できないよ。今度は、私が住めなくなっちゃう」
「そうだな、いちご。それが、住むということだ。住むということは、誰かに迷惑をかけるということだ。覚えておきなさい」
「へーい」
おじいちゃんは、時々説教くさい。
また、せっせと草をむしる。
数時間後、庭はある程度綺麗になった。けれど、まだ、手つかずのところが残っている。
そのままにしておきたい、と思った。なんだか決まりが悪かったから。自分をこの上ない善人だと思ったことはないけれど、ああやって飛散していくアリたちの姿を見るのは、少し淋しい。
だから、明日、おじいちゃんに頼んで、いくらか手つかずのところを残してもらおうと思った。
けれど、その日の夜に、Gの称号を持つあのお方が現れたから、私は手つかずのところも一掃すると心に誓った。
結局、私は自分勝手なのだ。
そして、生きるって、たぶんそういうことなのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます