来ヶ谷さんとの朝

 朝。

 いつものように来ヶ谷さんとご飯を食べる。

「今日はテストか?」

「うん」

「何点くらい取れそうだ?」

「さあ。60点くらい?」

「そうか。じゃあ、50点だったら、お姉さんとデートする権利を進呈しよう」

 来ヶ谷さんは小さく胸を張った。

「そこは75点とか普通いうんじゃない?」

「君はいつも120%の力で戦おうとするからな。君が口にする目標の少し下が丁度いいんだよ」

「ふうん、そういうもの?」

「そういうもの。さあ、行くぞ」

 促されて家を出る。


「65点だった」

 数日後の朝、来ヶ谷さんにそう告げた。

「そうか。よくやった。約束通り、今度の日曜、デートしよう」

「うん」

 けれど、私はその日の夜に熱を出し、数日寝込んでしまったから、日曜のデートはキャンセルになってしまった。

「今度は上手く50点を取れるようにしろ。なんであれ、無理はよくない」

 添い寝しながら優しく髪を撫でてくれる来ヶ谷さんの胸に抱きついて、私は声も出せず、泣いていた。

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