お姉ちゃんとの夜

「はい、お雑煮。お正月過ぎたのに、よく食べるのねぇ」

 お姉ちゃんが久しぶりに家に帰ってきた。

「えへへ。ごめんね、帰ってきたのに」

「いいのよ。可愛い妹の為ですもの。お姉ちゃん、腕によりをかけて作らせてもらいました」

 えっへん、と少し胸を張ったお姉ちゃんに、大喝采を送る。

「明日のお昼過ぎにはここを出なきゃいけないから、それまでいっぱい甘やかしちゃうけど、いい?」

 私はコクコクとうなずいて、ぎゅうってお姉ちゃんを抱きしめた。

「いちごちゃん、いい子にしてた?」

「うん」

「みんなと仲良くしてる?」

「うん」

「風邪とか引いてない?」

「うん」

「お勉強ちゃんとしてる?」

「うん」

「……、ママには謝った?」

「……、うん」

「……、そっか。それなら、よし。おいで、頭撫でてあげるから」

 そういって目にいっぱい涙をためた私を、お姉ちゃんは優しく撫でてくれた。

「いじめられてたからって、暴力はいけません。ま、私が同じ立場でもそうしたと思うけど。過ぎたるはなお及ばざるがごとし。なにごとも勉強よ勉強。子どもたちの仲裁なんて、私たち教師に任せてればいいの。あなたたちは勝手に、青春してればいいわ」

「ごめんなさい、ごめんなさい……」

 なにもきこえない私は、わんわんお姉ちゃんの胸で泣きながら、ただその言葉を繰り返すだけだった。

「……、こういう青春を間近で見れるから、教師はやめられないのよねぇ」

 お姉ちゃんは、朝になってようやく泣き止んだ私を寝かしつけたあと、家に帰っていった。

 

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