おじいちゃんとの夜
「はい、おじいちゃん、お茶」
「ああ、すまない」
いつものように縁側でぼんやりとおじいちゃんが座っていた。
「またパパと喧嘩したの?」
「どうしてそう思う?」
「今日の夕食がおにぎりだったから。パパが機嫌悪い時はいつもママがパパの好きな梅干しのおにぎり作るの。夕食なのにおにぎりって、いつも変だと思うんだけどさ」
「まあ、パパもいろいろ大変な仕事に就いているからな」
「今度の盗み、おじいちゃんも一枚噛んでるんでしょ?昔使ってたツテで」
「あはは、もうバレてしまったか」
「おじいちゃんだって、なにか企んでる時はこうして縁側でボンヤリ座ってるじゃない」
「いちごにはなんでもお見通しだな」
「ホント。なのになんで日本の警察は目を付けないんだか。そうだ。警視総監に今回の盗みリークしちゃおうかな」
「あ奴をそう困らせるな。今は選挙で忙しいんだ」
「へーい」
私も、自分で淹れた玉露を飲む。不味いお茶だ。自分でいうのもなんだけど。
「おお、今日もよく淹れられたな。美味いぞ、いちご」
おじいちゃんが優しく頭を撫でてくれる。その手がとっても温かいから。
「……、今度の盗み、絶対パパを守ってね。もう、前みたいなことは嫌」
「……、わかっている。愛する人を傷つけさせはせんよ」
そういうと、おじいちゃんは私をギュッと抱きしめた。
三日後、とある事務所が何者かに襲撃された。それ以上の情報が出てくることはなかった。
その日の夜、またパパは不機嫌だった。
「またあのじじいに先を越された。いつまでもガキ扱いされる身にもなれってんだ」
そんなことをいいながら、むしゃむしゃに梅干しのおにぎりをほおばっているパパを、私もママもやれやれといった表情で眺めて、それが済んでパパが眠りについた頃、おじいちゃんの部屋に行ってちょっといい和菓子を差し入れると
「お、やはりよいことをするとよいことが返ってくるな」
と、朗らかに笑ってくれた。
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