私の頭の中の家族1

田代茶夜

来ヶ谷さんとの夜

「雑念に囚われるな。真っ直ぐに見つめるんだ」

 そういわれ、ベッドの上で下着姿の来ヶ谷さんを見つめている。来ヶ谷さんは私のお姉ちゃんだったけど、曰く「私は愛しの妹に来ヶ谷さんと呼ばれたいんだ」とのことで、お姉ちゃんのことを来ヶ谷さんと呼んでいる。

「別に、来ヶ谷さんの下着姿なんて見飽きてるし、雑念なんて今更ないよ。来ヶ谷さんのほうが、私の下着姿たくさん見てニヤニヤしてるじゃん。あれのほうがよっぽど雑念あると思う」

 有体に自分の思いを口にしたつもりだけど、まだ来ヶ谷さんは納得いかない様子で、胸の谷間をちらつかせ、私の視線を集めようとしていた。

 やってることといってること、真逆すぎだよなぁ。

「愚か者」

 次の瞬間、私は来ヶ谷さんに押し倒された。

「雑念に囚われるなといっただろ」

「いいじゃん、私がどう思っても。雑念に囚われても囚われなくても、私は私だし、来ヶ谷さんが好きだって気持ちはこれからも変わらないよ」

「……」

 そういうと、来ヶ谷さんは押し黙ってしまった。

「……、どうしていつも君はそういう恥ずかしい言葉がスラスラ出てくるんだ」

「こういう言葉をスラスラといえる女の子だけ、神様は可愛くしてくれるからだよ」

 また来ヶ谷さんが押し黙る。

「私は来ヶ谷さんのこと好き。大好き。だから、来ヶ谷さんも私のことを好きでいてください」

「……」

 まだ来ヶ谷さんは押し黙っている。

「来ヶ谷さんだって私のことが好きだから、いまこうして私の下着姿を見てほんのり顔が赤くなってるんじゃないの?」

 否定も肯定もしない。

「雑念があるとかないとか、そんなことどうでもよくって、ただ『好き』って感情で私を見つめてよ。たぶん、私よりずっと強い『好き』の感情でさ」

 そういうと、私は来ヶ谷さんに抱きついて、頬にキスをした。

 その日は、二人で寝ることにした。いい夢が見れそうな気がした。

 耳元で「いちごのことが好きだ。世界でいちばん愛してる。私だけのお姫様」って囁かれたから。

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