響く電話の音
「えっ? どういうこと?」
久しぶりに実家へ帰って来た
確か昨日は今日帰ることを伝えるとき、母はなにも変わらないふうに「待っているわ」といっていたではないか。
それなのに実家に戻ってみるとだれもいない。家具もあるし、鍋もコンロの上にある。煮物でもしていたのだろう。香ばしい臭いもしている。たしかについさっきまでいたということはわかるのだが、その静けさに異様さを覚えてならない。
確かに出るとき実家に連絡はしていないけど、昨日の時点でこの時間につくことは告げている。それなのに両親は出掛けたとでもいいうのだろうか。いくら田舎でも玄関は鍵がかかっていないというのは無用心すぎる。
もしかして、亜久里が帰ってくるのを見越して開けたままにしたのだろうか。でも、一応亜久里も実家の鍵は持っている。だから、開けっぱなしにする必要性はどこにあるのだろうか?
いずれ戻ってくるだろう。
亜久里は家で待つことにした。
けれど戻ってこない。
いくら待っても戻る気配もなく、朝十時頃きたというのに、いつのまにか日が暮れている。
なにかあったのだろうか。
亜久里は胸騒ぎがして仕方がない。
とにかく電話しようと母のスマホへと連絡する。
けど、出ない。
やがて“おかけになった電話番号は……”というアナウンスが聞こえ始めたのだ。
なにかあったにちがいない。
そうでないなら、亜久里からの電話をとらないなんてありえない。
なにか事故にでも巻き込まれたのだろうか。
亜久里は両親を探すために外へ出ようとした。
すると家の固定電話が鳴り響いた。
久しぶりに聞く実家の固定電話。当たり前のものだったはずなのに、なぜか不気味に感じてならない。
心臓がドキドキする。
取っていいものか。
あの電話をとってしまえば、戻れなくなりそうな気がして恐怖に襲われる。
だけど、あれは両親からの電話かもしれない。
亜久里は恐る恐る受話器を取った。
「はい。佐々木です」
『亜久里?』
受話器の向こうから聞こえたきたのは母の声だった。
「お母さん!? 」
けど母の声は暗い。自分の名前を呼ぶ声だけでただならぬことが両親の身に起こっていることが理解できる。
「お母さん。いまどこにいるの? なにかあったの?」
「…………」
母は黙り混んでしまった。
「お母さん?」
『ごめんね。亜久里。本当にごめん』
それだけつげると電話が切れてしまった。
「お母さん? お母さん! お母さん!」
何度も呼び掛けるもトゥートゥーと電話が切れた音のみが耳に響き渡るばかりだった。
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