第二章 湯煙殺人未遂事件 8

 先ほどとは逆になってしまった。

 今度は俺がサルベージしたジェイドの頭を後ろから支えるようにして自分の胸に抱きながら湯に浸かる。

 湯を大量に飲んでしまったショックからなのか、彼の目が開く気配はない。

 しかしそれでも、聞こえてくる安らかな呼吸音と、穏やかな寝顔を見る限りは大丈夫だろう。

 俺はそんな彼の様子に安心すると同時、その無防備な顔を見ていると今まで感じたことのなかったポカポカとした気持ちになってくる。

 ……何かこうして見ると、カワイイなあ。

 本人にそれを言ったら困った表情を見せるだろうが、とにかくカワイイのだ。

 現在、自分が美しい美少女だから見ることができる風景。

 そして――そこから描けることができる夢。

 それは、俺がこの美しい美少女の身体になって、時間が経てば経つほどにそれは大きく広がっていってしまう。

 しかしそれは同時に、この身体の本来の持ち主の夢とは、乖離していくことを意味する。

 ティフォと俺。

 ステンベルク王国を良い国にしていくと言う目標は共通だけど、同じ身体で見る違う夢は、とても罪深いものに思えた。

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