第二話「日常」 その1
第二話 「日常」
あの波乱の入学式から数日。
あの後の自己紹介は特に何事もなく終わり、久保田さんも特に何ともなかったようで、坂本先生による連絡事項の後、解散となった。
入学式の次の日以降はしっかり授業が入っていて、それなりに高校生らしい生活をしていたような気がする。
まだ部活も決めていないし、環境にも慣れたとは言えないが、そこそこ楽しく過ごしている。
これからの三年間の高校生活に思いを馳せながら、今日も今日とて日常を紡いでいく…。
4時間目の授業が終わり、昼休み。
授業道具を片付けて、お弁当を食べる準備をしようとしていると、教室の扉から別のクラスの生徒が入ってきた。
クラスメイトからの見惚れたような視線を受けながらこちらへ向かってくる彼女は、そう、ミキミキであった。
ミキミキとはあの日以来、毎日一緒にお昼ご飯を食べるのが日課になっていて、いつも彼女はウチのクラスに足を運んでくれる。
彼女がお昼ご飯を食べに来るたびにクラスメイトからの視線が集まってくるのだが、もはや今までの人生で場数を踏んでいるのか、ミキミキは気にするそぶりもなしにお昼ご飯を口に運ぶ。
逆に周囲からの視線に慣れていないウチは、そわそわと落ち着かない状態でご飯を食べないといけないから大変だ。
でも、決して嫌なんかではなかった。
ミキミキと話していると楽しいし、クラスメイトもミキミキに段々慣れてきたのか、徐々に視線を感じなくなってきている。
そうして、いつも通りミキミキとおしゃべりをしながらお昼ご飯を食べていると、近くでよく見知った男二人の会話が聞こえてきた。
どうやらカナメと亜成がこれまた近くで一緒にお昼ご飯を食べているようだ。
「この前貸したAV、見た?」
「ああ、しっこり見たぞ」
「いやー、結構ハードな内容だったけど、意外とシコれたよね。特に、女優が●●●●●●●●●●●●●●●●●●●で●●●●●●●●●●なのが良かったねえ」
「お前、今食事中だぞ…。そんな内容を教室の中で言うとか、さすがの俺でも引くわ…」
ちょっと…ほんとに食欲無くなってくるからやめて…。
そう思いつつ、できればあいつらと関わり合いになりたくないので口には出さないでおいた。
ミキミキもこんな話を聞かされて気分悪くなってるだろうな、とミキミキの方を見てみると…なぜかカナメの方をジッと見つめていた。
「……(じーっ)」
「えーっと、ミキミキ。そんなにカナメの方を見て、どうしたの?」
「えっ。あ、いえ、なんでもありません!」
なんでもあるなこれは…。
まさかとは思うけど、カナメのことが気になるとか…?
いや、多分汚物を見るような視線を向けていたに違いない。
うん、きっとそうだ。
いや、待てよ。
逆に変人すぎて興味がわいている可能性も…?
…ま、いっか。
あんなやつのことなんか気にする必要もないと自分の中で割り切って、ミキミキとのランチを再開する。
「ていうかさ、そろそろ貧乳か巨乳か論争に決着をつけない?」
「だからあ、前から言ってるけどその議題不毛すぎるんだよな。どちらにもいいところはあるんだから、お互い譲るわけないだろ。きのこたけのこ切株論争くらい不毛だ」
「き〇りの切株を戦争に巻き込むなよ!てか、そうは言うけど、どう考えても巨乳の方がメリット多くないか?って話なんだよな」
「それはそうだ。俺だっておっぱいはある方が好きだ。しかしな、貧乳好きの人たちからしたら、そのダイナミックさの無さの裏にある、大和撫子のような奥ゆかしさを感じているんじゃないか?」
「そんな和風な考え、理解できないね!やっぱりデカい方が強いんだ!」
「わかるぞアナル。俺もデカければデカいほど良いと思っている」
「よし、んじゃあ貧乳好きを名乗る奴らには鉄拳制裁としてアナルパンチを食らわせてわからせてやりに行くぞ!」
「それは肛門からパンチが出てるのか、それともただのお前のパンチなのか、どっちなんだ!?」
…あいつらは気にするそぶりもなく意味の分からない話を続けていた。
…ていうか、あいつらには貧乳の良さというものを力ずくでもわからせてあげる必要があるみたいね…!
「…!貧乳の殺気を感じる!」
そしてなぜかカナメに殺気を感じ取られてしまった。
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