第7話『芒の配達人』
朝食を食べ終え、私は外である人を待つ。心地よい
空中から。
その人は
そう、彼が抱えているのは箒ではない。箒に似た、そのものこそが彼が私に届けに来たもの、
空色の髪に
ソラは“西の大陸”レヴァルロ出身で、数年前、私と同じくらいの時期に
彼に言わせれば『仕入れの一環だから別に良いだろ?』ということなので、何もしていない訳ではないらしい。そんな奔放な彼だが、私が店に行く時は
同時期に故郷から出てきたこと、同年代であることから彼とは出会ってから程なくして仲良くなった。しかし、私と彼にはひとつだけ大きな違いがある。見てわかる通り、彼は現在進行形で空を飛んでいる。そう、彼と私の大きな違いは、魔法を扱えるか否かだ。
「おはよう、ヤタ」
「おはようございます、ソラ」
彼はふわりと私の前に着地すると、脇に抱えている芒の束から一
「ほい、これがお届け物だ」
「ありがとうございます」
「その辺の
適当なこと言ってごまかしているが、しっかりと良質な物だけ選んで採ってきている。ここ、
「流石、芒のプロですね」
「1年にたった1日の職業だけどな。万屋は何でも屋だから、何屋になっても許されるから気楽さ」
「確かにそうですね。それはそうと、この芒はかなり立派なものですね。
「あー、ヤタは着火剤に使うのか」
「ええ、とても燃えやすいので重宝していますよ。これも役目を終えたら、もちろん燃料になりますよ」
「魔法が使えないと色々大変だな」
「多少面倒ではありますが、私が使えないので仕方ないですよ。ないものねだりをしたところで、いきなりあるようになったりしませんから」
魔法が使えないことで、日常生活に多少の不便は
「しかし、箒で飛んでくるなんて珍しいですね。いつもは歩いてここに来ているのに」
「村中飛び回るからだよ。そんな距離歩き回ったら疲れちまう。つっても、ここともう2、3か所だけどさ」
「なるほど。結構な距離を移動するとなると、箒の方が
「あと、ついでに鮮度も大事? らしい」
「鮮度? 芒のですか?」
「あぁ、
「彼女、植物に強いこだわりがあるので、それ関連はうるさいですからね」
「あぁ、まあいつものことだから大したことないけどな」
「あんまり長話していたら、芒の鮮度が落ちてしまいますよ?」
「はは、確かにそうだな」
ソラは箒に乗って、出発の準備を済ませる。
「そんじゃ、残りのこいつらも配達してくるわ。新鮮なうちにさ」
「ええ、気を付けてくださいね。また午後に、芒のお返しをしに行きます」
「おう。午後には店に戻って待ってるわ。んじゃ、また昼に」
ソラは地面を
段々と小さくなっていくソラの姿を見届けながら、箒に乗ってみる自分を想像してみる。
自由に移動できるのは、なかなか楽しそうなものですね。支えがないから、ちょっと
空を自由に移動できるのは、私には似合わない。必要以上に、背伸びをしすぎているような気がするから。
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