宵待ちの朝
第6話『宵待ちの朝』
午前6時。目覚まし時計が、私を
うん、今日もよく晴れています。
陽光の力で
階段を下りる前に、リンの部屋を
今日もちゃんと見回りに行っているようですね。
こんな確認を毎日しているのは特に意味はない。リンが元気な時には、決まって部屋にいないからだ。しかし、万一に具合が悪い時のことを考えて……というのは言い訳だろうか。
リンが仕事をしに行っているのを確認し終えると、階段を下りていつものルーティーンを行う。コーヒーを
コーヒーを淹れたら、それを楽しみながら朝食を作る。食パンをバターで焼いて、
こういう朝の時間というのは、のんびりしているはずなのに、
時計を見ると、6時40分前を指している。時間を確認すると、鍋から小さめのマグにホットミルクを入れる。
ふたつのマグを向かい合わせに置くと、
そろそろ、リンが見回りから戻ってくる頃合いでしょうか。
こんがりと
「ヤタ様ー、おはよー!」
「リン、おはようございます。庭園に異常はありましたか?」
「そーだねー、今日も変なところはなかったよー」
「そうですか、よかったです」
「でもねー、お山の上の方がだいぶ寒くなってる感じがしたよー」
「ふむ、そろそろその辺りの植物には冬支度をさせなければいけませんね」
「
「ええ。しかし今日はそれよりも優先すべきことがありますから、急ぎで対応することが無いのは助かります」
「きょーはなにかあるのー?」
リンが首をかしげる。
「今日は何日でしたっけ? 今日は月曜日ですよ」
この世界の暦は1週間が7日でひと月が30日、12か月360日で1年だ。そして、月の満ち欠けの周期は28日、つまり4週間となっている。この世界の月曜日は、月に関係するイベントが多いことから、そう名付けられている。
「にじゅう、なな……きょーは満月?」
そう、満月の日は必ず月曜日となるのだ。
「そうです、今日は満月ですよ」
「あー! とーぞくの日だー!」
「
夜月(9番目の月)の15日、その日に一番近い満月の日には、秋の名月に関するイベントがある。
前回の満月は晴月(8番目の月)の29日だったから、それよりも今日の方、夜月27日の方が夜月15日に近いのだ。
その日は、その年の収穫を月に感謝するというものだ。
夕方には“月の子盗賊”というイベントがある。
作物の実りを平等に分配し、子供の成長を願うイベントとしてこの世界の風習となっている。古来は、
毎年、この日には山の
「くだものの収穫をするんだねー。秋はおいしいくだもの、多いもんねー!」
「
「うんうん、どれもいい感じに実ってるよー!」
「それは良かったです。本来は季節がばらつきますからね。リンの
「えへへー、うれしいなー!」
まんざらでもなさげだが、どこか嬉しそうな顔になる。
「どういう順番で収穫していきましょうか――」
「――いえ、収穫よりも先にしなければならないことがありました」
「なにかあったっけー?」
「トーストと飲み物が冷めないうちに、朝食にしましょう。収穫はそれからですね」
「そーだねー。お腹がすいてたら、何にもできないもんねー?」
「それでは、朝食を頂きましょうか」
私たちは
「いただきまーす!」
外の様子と同じように穏やかに、今日も1日が始まる。
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