第30話 もっとしたい、柚希と

「んっ、あむっ……柚希、好き……んちゅ、ちゅむっ……はんっっ……」


「ハァハァ、んちゅ、ちゅぷっ……んっ、美鈴、俺も……俺も好き、好き……んっ……」

 体育祭が来週に迫って、いよいよ秋まっしぐらとも言える9月に。

 美鈴の家の玄関で、水着の美鈴と抱き合いながら俺たちは首元にキスをし続けていた。


「んちゅ、柚希、好き、好き……あんっ、んんっ……んっっ!!!」


「あむっ、ちゅぽっ……俺も好き、美鈴大好き……んちゅ……」

 互いに好きという気持ちを伝えながら、でもそれを叶えることが出来ないもどかしさも感じながら。

 恋人も、本気のキスも、それ以上も……これ以上の形で大好きを伝えられない現状への寂しさを感じながら。


「んんっ、柚希、柚希……あんっっっ!!!」


「美鈴、美鈴……ハァハァ、美鈴……大好き、美鈴」

 それでもお互いの好きをいっぱい感じて、お互いの大好きを共有するために。

 お互い気持ちよくなって、もっともっと自分を好きになれるように、もっともっと……様々な感情渦巻く中で、離さないようにその華奢な身体を抱きしめながら。俺が出来る精一杯えをしながら、美鈴の甘くてしょっぱい首元にキスをし続けた。



 ☆


「んんっ、柚希……あんんっっっ……ハァハァ……好き、ゆじゅき……だいしゅき」

 しばらくそんな幸せな時間を過ごしていると、俺に身体をギューッと密着させて、首元を吸いあげるように激しいキスをしていた美鈴の力が急に弱くなる。

 そして糸が切れたようにぐったりと俺に全体重を預けてきて。


「んちゅ、ちゅぷっ……だ、大丈夫? 大丈夫、美鈴?」


「ハァハァ、好き……うんっ、大丈夫。大丈夫だよ、柚希……えへへ、すっごく気持ちよかった。すっごく幸せで、大好きだった……えへへ」

 俺の肩に顔を埋めた美鈴の声は、息荒く妖艶に震えていて。

 絡み合った脚の間からは、少し温かく濡れた感覚とぴちゃぴちゃと床に落ちる水音を感じることが出来て。美鈴の愛をその水滴から感じることが出来て。


「……ふふふっ、本当にえっちだな、美鈴は」


「ハァハァ、あうっ……ゆ、柚希のせいだもん! 柚希とスるのが気持ちよすぎて、柚希と一緒なのが嬉しすぎて……柚希はえっちな女の子、嫌いですか?」


「ううん、大好き! その相手が美鈴ならもっと好き、えっちで可愛い美鈴の事は大好きだよ。そんな美鈴も、大好きだよ」


「えへへ、やったー。美鈴も大好き、柚希の事好き……んちゅ……ふひひ」

 ぴちゃぴちゃと透明な液体をふとももから垂らしながら、とろーんと蕩けた美鈴は再び俺の首元にキスをして。

 ふふっ、そんな事言ってくれるのは嬉しいけど、そろそろ色々やばいよ、本当に! 本当に色々ね!


「んちゅ、ちゅるっ……んっ、柚希、柚希……ハァハァ」


「ストップ、ストップ美鈴。そろそろ玄関から移動しよ、ここで続けたらびしょびしょなっておと……後片付けが大変になるさ! この後、色々片付けるの嫌でしょ、美鈴も?」


「ちゅちゅ、ちゅぷっ……え、後片付け? うっ、確かに……そうだね、移動しなきゃだね。じゃ、美鈴はお風呂行きたい、お風呂で温かくなって、身体キレイにしたい……でも歩けない。柚希と気持ちよくなりすぎて、柚希にずっと抱き着いていたすぎて、美鈴もう歩けない……えへへ」

 とろんと蕩けた美鈴は、そんな甘々な声を出して俺から離れようとしなくて。

 ぎゅー、っと火照った身体を、濡れた下半身を俺に押し付けながら幸せそうにとろとろ甘々な声で笑って。


「も~、しょうがないなぁ、美鈴は! どうしてほしいの、美鈴? 美鈴が離れてくれないと、お風呂は一緒に入れないよ?」


「ん~、柚希のいじわる……柚希なら美鈴のして欲しいこと、わかるでしょ?」


「……本当にえっちでしょうがないな~、美鈴は! しっかり掴まってよ!」


「えへへ、えっちでいいもん、柚希が好きって言ってくれたら美鈴はえっちでもなんでもいいもん……ふへへ、それじゃあお願いします……わぁ!」

 そんな嬉しいことを耳元で囁いてくれる美鈴のキスマークと唾液でびちょびちょな首元と、別の液体でひんやりびしょびしょなふとももにすー、っと手を伸ばす。


「んあっ、柚希……んんっ、ゆじゅき~」


「も~、変な声出さないの! ホントえっちさんだね、美鈴は……そう言う所も、好きだけど」


「だってぇ、柚希の持ち方えっちなんだもん……う~、でもこれ好き。柚希にお姫様だっこしてもらうの好き……もちろん柚希も大好き」

 そうしてお姫様だっこの体勢になった美鈴をひょいっと持ち上げる。

 ふわっと姉ちゃんより軽い感覚とともに、俺の身体に埋めていた美鈴の顔が離れて、キスをしていた間見えなかった美鈴の可愛い顔と久しぶりに対面する。


 完熟トマトみたいに真っ赤に熟れて、気持ちよさそうにほっぺも、瞳もだらしなくとろとろにしていて。

「ふふふっ、本当に可愛いなぁ、美鈴は。それにえっちな顔してる。ほっぺとか真っ赤で、すっごく可愛くてえっちだよ」


「うぅっ、ほっぺ触っちゃダメ……柚希だって真っ赤だよ! 柚希だって、絶対美鈴に負けないくらい、真っ赤な顔してる!」


「ふふっ、それはそうだろうね。だって大好きな人と抱き合って、キスして今はお姫様だっこ……こんなシチュエーション、興奮しないわけないもん。こんなことなったら、そりゃ顔も赤くなりますよ……ふふふっ」


「ふひひ、そっかぁ……それなら美鈴も一緒だよ。美鈴だって、大好きな柚希と一緒に居て、大好きなことしてるからこうなってるんだよ……んんっ? ど、どうしたの、柚希?」


「いや、ビキニをお姫様だっこするの、なんかすごいえっちだな、って思って。うまく言えないけどすごくえっちだ、美鈴の色々見えてすごくすごい!」

 お姫様だっこすることで、なんかその……水着の良さが引き立つというか、何というか! 


 より破壊力が増すというか、密着感ならさっきまで抱き合ってた方がすごかったけど、なんか視覚的な事というか、胸の出っ張りとかふとももから上にかけての濡れ具合とか形とかがしっかり見えて、その分興奮するって言うか……と、とにかくわかんないけど、こっちの方がすごく興奮する! 美鈴の姿、興奮する!


 そう言うと、美鈴はふにゃ~っと顔をもっと蕩けさせながら、

「えへへ、そっかぁ……ふへへ、柚希が興奮して、もっと美鈴の事見てくれるの嬉しいな、美鈴の事大好きしてくれてるの嬉しいな……いひひ、本当に嬉しい、柚希……んちゅ、ちゅちゅ……」


「あんっ、あぁんっ、美鈴指はダメ! 力抜けちゃう、落っことしちゃうよ美鈴の事。もう、やめて、舐めないで……ほ、ほら着いたよ。お風呂だよ、美鈴。ここからは美鈴がしてね、流石にお風呂はダメだから」


「ふひひ、柚希は指も甘くて美味しいもん……って、もうついちゃったの? う~、まだ柚希と一緒が良い……ねえ柚希、お風呂一緒に入らない? 二人で裸になって、美鈴の事、いっぱい大好きしてくれない?」


「……み、魅力的な提案だけど、やっぱりそれはダメ! それは俺が我慢できなくなる、今ギリギリ抑えてる理性が保てなくなる」


「良いよ、保たなくて。美鈴の事、柚希ならめちゃくちゃにしていいんだよ? 美鈴は、柚希の美鈴だもん。美鈴の事、柚希の好きにしていいよ?」


「そ、そう言ってくれるのは嬉しいんだけど! でもダメ、俺も美鈴と一緒の理由だから。それしたら、その後して……俺が今の美鈴と柚希の関係、保てなくなる。だからごめん、美鈴……でも大好きだよ、本当に」

 お風呂の扉を開けた先にあるふかふかのマットレスの上に、美鈴の身体をちょこんと優しく座らせる。


 そしてむすー、っと顔を膨らませる美鈴の可愛い頭をなでなでして……俺だって美鈴と一緒にお風呂、入りたいよ。美鈴の事、もっといっぱい愛して、大好きしたいよ。

 でもそうしたら俺が持たなくなっちゃうから……俺が絶対、そう言う関係迫っちゃう。


 美鈴がダメって言ってるのにそう言う関係無理やり……だからダメ。

 さっきも勢いのまま告白しちゃったけど、美鈴には、その……色々、あるんだし。そう言う色々、俺が気軽に触れちゃダメだから。

 そうやって美鈴を傷つけるの、やっぱり絶対ダメだから。


 ちゃんと考えて、俺も行動しなきゃだ、さっきみたいに安易に触れそうになるのはダメだ。

 これ以上美鈴を、傷つけないように、俺もちゃんとしなきゃ……せめて俺と二人の時だけは、そう言う事考えずに気持ちよくいられるように。そんな嫌な事考えずに、美鈴が楽しく笑って、幸せでいてくれるように。


「ん~、頭なでなで気持ちいい……えへへ、好き、大好き柚希……そ、そっか。わかった、大好きな柚希がそう言うならやめる、一人で入る……えへへ、じゃあ待ってて、柚希。お部屋で美鈴が帰ってくるの待っててね、柚希」


「うん、待ってる。ゆっくりお風呂入っておいで、美鈴」


「うん! ゆっくり入るね、柚希!!!」

 そんな事を考えながら、どこか幼い雰囲気の美鈴をお風呂に送り出し、俺はトイレに向かう。


「ハァハァ、美鈴……美鈴」

 何でかわかんないけど、さっき気持ちよくなってから美鈴がかなり幼く無邪気な感じなったな、でもそっちの美鈴も可愛いな、なんて思いながら。

 こういうあまえんぼうで、素直で色々幼い美鈴も可愛いなって。やっぱり美鈴は、どんな美鈴でも可愛いな、って感じながら。


「ハァハァ……んんんっ……ハァハァ……美鈴、美鈴……んっ」

 俺は美鈴の家のトイレで、美鈴の事を考えて、臨界点のそれを爆発させた。



 ☆


「はぁ~……やっちまったぁ、やりすぎたぁ……はぁ~」

 まあ、そう言うことをした後は、こんな感じで強めの賢者タイムが襲ってくるわけで。

 美鈴の家のふかふかソファの上で、俺は一人反省会をしながら頭を抱えていた。


 美鈴もノリノリで楽し幸せそうだったとは言え流石にやりすぎたよな、お互いの首元キスマークたっぷりだったし……完全にやりすぎた、姉ちゃんに説明できないレベルでやりすぎた。

 久しぶりに会った大好きな美鈴が、俺の願い通りの黒ビキニを着てくれてたと言う事にハッスルしすぎた、反省。流石にやりすぎ、俺の欲望駄々洩れすぎ。


 あ、あと告白したのも! ダメってわかってでしょ、アレ!

 月曜日の件で点と点がつながって、そう言う事を美鈴に考えさせちゃダメってわかってたのに……あぁ、俺のバカ! 欲望に忠実すぎだ……み、美鈴が可愛くてえっちで大好きすぎるのがいけな……なんて美鈴のせいにするのは最低!


「はぁ~……やばっ」

 とにかくやりすぎたよな、玄関先も美鈴でびしょびしょだし。

 拭いたけどぐしょぐしょで、それに美鈴の甘い匂いが……と、とにかくやりすぎです、今日の俺は! 反省点もぶり返すし、色々反省しろ!

 俺は美鈴を幸せにするんだろ! 美鈴が美鈴を堪能デキて、楽しく幸せにできる時間を作るんだろ、それが俺の役割でしょ! 俺の欲望だけで動くのダメ!!!


「ふ~、いいお湯だった……えへへ、お待たせ柚希」

 そんな事を考えて、一人反省会をぐわぐわ動きながら行っているとてくてく湯上りのいい匂いとともに、美鈴の声が聞こえる。


「あ、おあがり美鈴……わお!」


「うん、あがりました……えへへ、どうかな? これも可愛い、柚希?」

 ダボッとした猫耳パーカーの美鈴が、そう言ってニコッと微笑んだ……いや、可愛すぎるって、美鈴!!!



 ★★★

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