第14話 学校では委員長

「えへへ、これはどうかな、柚希? これも、似合ってるかな?」


「うん、似合ってる! めっちゃ似合ってるよ美鈴! すっごく可愛い、それにセクシー!!! これは自主規制はいるよ、そよ風と呼ぶには強烈すぎるよゼファー先生!!! なんて言うか、その……すごいよ、現実その衣装! 髪色以外完全再現じゃん、美鈴!!! 可愛い!!!」


「最後の稽古をつけてやる……ふふっ、ありがと、柚希。えへへ、実は結構自信あったコスプレだから、柚希にそう言ってもらえると嬉しいな……えへへ、柚希が美鈴の事見てくれて、いっぱい可愛いって言ってくれて……ふへへ、美鈴はすっごく嬉しいよ。私本当に嬉しい、柚希がそんな風に美鈴の事いっぱい見てくれて……という事で、まだまだコスプレあるんだけど、見たい? 柚希、もっと美鈴の事みたい?」


「うん、見たい! 美鈴の可愛いコスプレ、もっと見たい! いっぱい美鈴の事、俺は見たいです!!!」


「うんうん、ありがと……ありがと、柚希。それじゃあちょっと待っててね……また可愛くて、柚希専用の美鈴、用意するから」



 ☆


「今日はありがとね、柚希。楽しかった……本当に、ありがと。ナンパ、助けてくれたし、その後も美鈴の事、いっぱい見てくれて……すごく嬉しかった、ありがと。本当にありがとうだよ、柚希」

 夕焼けにオレンジ色に染まるアスファルトの上で。

 そう言った美鈴が嬉しそうに……でもどこか寂しそうに笑う。


「ふふっ、ありがとうはこっちだよ、美鈴! ナンパはたまたまだし、焼きそばも食べさせてもらったし、それに美鈴の可愛いコスプレいっぱい見れたし! 俺だって、すごく楽しかった、今日はありがとう! 本当にありがとうだよ、美鈴!」

 あの後も、俺と美鈴の二人だけのヒミツのコスプレショーは続いて。


 定番の女性教師やチアガールから、アニメのキャラクター、それに何かわかんないけどとにかく可愛いコスプレ……本当に色々な美鈴堪能して、めっちゃ楽しんだ。

 美鈴は本当に顔もスタイルも抜群で、どんなコスプレも似合って、可愛くてセクシーでえっちで……んむっ! 


 と、とにかく、俺もすっごく楽しかった! 美鈴のいろんな姿見れて、最高だったよ!!! 本当にありがと、美鈴……しばらく色々、罪悪感はあるけど、その分背徳感マシマシで困らないと思います!

 だから、本当にありがと美鈴! マジで可愛かったし、楽しかったよ!!!


「えへへ、褒め過ぎ柚希……そんな可愛いとか最高とか言われると、色々とろとろして、身体抑えられなくて……柚希の事、大好き加速して、それで今から……んんっ、こほん! ま、まあ柚希もそう言ってくれるなら良かった! 私も、すっごく楽しかったから……美鈴を出せてすごく楽しかった。だからちょっと名残惜しいな……お父さん帰ってこなければ、もっと続き出来たのに」

 ギュッと服の裾を掴みながら、残念そうに唇を噛む。


 美鈴の今の服装は、今日一日のコスプレとか派手でハッピーな服じゃなくて、かなり地味な灰色パーカーとダボッとしたスエット。

 眼鏡して、髪も少しぼさっとさせたせいか、さっきまでとは全然違う地味な印象に早変わり……でもその中にも、これまでは意識してこなかった素材の良さがむんむんに出ているけど。


 とにかく、今の美鈴は、いつもの「委員長」って感じ。

 さっきまでが「美鈴」なら、今は「委員長」―そう言えるほど、結構大きな変化。


 その言葉に、美鈴は苦笑いを浮かべながら、

「ま、うちはお父さんが厳しいからね。娘が少しでも派手な格好とかしていれば、怒るわけですよ。だから、お父さんが帰ってくる前にこうやって、いつもの私に戻ってるの。美鈴じゃない、いつもの私に……だから反動で、休みの日にあんな事してるってのがあるんだけど」


「なるほどね。にしては、結構わかりやすいところにコスプレ衣装とかあったと思うけど」


「ふふっ、流石にうちのお父さんでも、私の部屋までは入らないからね。だからあの位置で良いの、私のヒミツは……それにヒミツって、近くにあった方がドキドキしない? 危ないことって、見られるか見られないかの瀬戸際の方がドキドキしない?」


「いや、俺は思わないけど……美鈴って、ちょっと変態っぽいよね、そう言う所。なんかその……ちょっと、変態さんっぽいところ、あるかも」

 人に見られると興奮するとか言ってたし、そう言う目的で外で歩くって言ってたし。

 そのえっと……目隠ししてる時のつり橋とは言え、かなり興奮してる感じのアレもそうだし。見られてるかも、って感じが興奮する、って聞こえた気がしたし。


 コスプレは可愛いし、普通のも多かったけど、でもやっぱり大胆で視線集める感じのがちらほら混じっていて。

 だから、その……なんか変態さんな感じあるよね、美鈴。


 そう言うと、美鈴は少しほっぺを赤らめながら、

「え、変態? そ、それも別に、間違ってな……むむむ! む~、柚希! 女の子に変態さんとか言っちゃダメだよ、ぷんぷんだよ! そ、それは流石の私でも、怒っちゃうよ!」


「あ、ごめん! ごめんね、美鈴、ちょっと気になったというか……ごめん、軽率だった。ごめんね」


「……まぁでも、確かにそう言う所はあるかもだけど。人に見られるのは好きだし、柚希に見てもらうのも……確かに変態さんかも。柚希の言うように、美鈴は変態さんなのかも……ふふっ、また何かしようかな? 変態産っぽいこと、してみようかな?」


「……止めないけど、危ないことしちゃだめだよ。今度は俺、助けられるかわかんないんだし。大変なことなっても知らないよ」


「ふふっ、冗談だよ、柚希。しないよ、私だって怖いし。それに……美鈴は柚希専用だからさ。美鈴は、柚希限定だから……だから変態さんも柚希限定だよ。美鈴は、柚希限定の変態さんだよ……ふふっ、この表現、結構好きかも」

 そう言って、パチンと可愛くウインクする美鈴。

 俺限定の変態さんか……俺限定の……


「……そ、そうだな! 俺限定にしてくれ、絶対危ないことしちゃダメだからね! だ、ダメだからね、美鈴!」

 ちょっと……いや、めっちゃ興奮するな、そのワード。

 俺だけとか限定とかだけでもアレなのに、変態さんとか……ふふっ、やばっ。ちょっとまずいや、隠すけど。


「うん、そうする。柚希にしか見せないよ、こんな姿。美鈴も、変態さんも柚希限定にする……あ、お父さんあと10分で帰ってくるって」


「そ、そうしてくれ……っと、もうギリだな、時間。見つかったらやばいんだよな?」


「うん、お父さん厳しいから。男の子、家に呼んでたなんてバレたら怒られる……そもそも、友達作るのもアレなのに……だからごめん、柚希。急いで帰ってほしい……あ、そうだ。大事な事、忘れてた」

 ペコっと申し訳なさそうに頭を下げた美鈴が、何か思いついたようにもう一度顔をあげる。

 その顔に浮かんでいたのは複雑な表情……色々混じってよくわからない、複雑な色。


「どうしたの、美鈴?」


「その、えっと……今は美鈴だけど、学校では今まで通り、委員長って呼んでほしい。私の事は、学校では委員長って呼んでほしい」


「……いいけど、なんで?」


「え、そ、それは柚希に美鈴って呼ばれたら興奮するし、今日の……んんっ! んにゅ! それは、私委員長だし、みんなのイメージ守らなきゃだし! それなのに柚希が名前で呼んでたら変でしょ? だから、お願い、委員長で……学校では、委員長でお願い。委員長って、呼んでください」


「お、おう……わ、わかったよ、委員長」

 なんだか熱量の凄い美鈴……委員長に押し切られるような形になったけど、委員長の言葉に首を縦に振る。


 まあでも確かに、「美鈴」と「委員長」じゃ全然イメージ違うし、俺も……色々、美鈴呼びなら思い出しちゃうし。

 それに俺の周りも不信がるだろうし、確かに委員長呼びが正解なのかも?


「うん、それが正解……で、でも、二人の時は美鈴って呼んで……今とか、二人の時は美鈴って、呼んでほしい」


「え?」


「学校では委員長だけど、でも二人の時は美鈴だもん……柚希専用の、美鈴だもん。だから二人の時だけでも、私の事は美鈴って呼んで……学校では委員長でも、柚希の前では美鈴だから。柚希専用の美鈴だから」

 そう言いながら可愛い上目づかいで見上げてくる。


 ……

「わかった、わかったよ! 二人の時は美鈴だね、ちゃんと美鈴って呼ぶ。その方が俺も、嬉しいし」

 ずるいよ、あんな顔!

 可愛いに決まってるじゃん、OKするに決まってるじゃん……やっぱり美鈴、可愛すぎるって! 学校でも我慢……いや、委員長なら大丈夫か。


「うん、美鈴も嬉しい……柚希がそう呼んでくれたら、私は……じゃ、じゃ、これで本当にさよならだね。またね、柚希」

 俺の言葉にうん、と可愛く頷いた美鈴が、そうゆっくり手を振る。


「うん、またね、美鈴……委員長」


「うん、バイバイ、手塚君……明日は手塚君だけど、私の中では、いつでも柚希だよ。だから、お願い、柚希……私をたまには、美鈴にしてね。美鈴の事いっぱい見て、いっぱい感じて……柚希だけの、美鈴にしてね」

 そう言った美鈴は、満面の笑みを俺に向けてくれる。

 夕日に照らされたそれは、ものすごく絵になって、それで、それで……


「……わかってるよ、美鈴。俺だけの、美鈴にしてくれ」


「うん、なる! 美鈴は柚希専用だよ……柚希だけの、美鈴だよ!!!」

 ……ああ、もう可愛すぎるな!

 こんなの反則だよ、美鈴は。

 どんな顔も本当に可愛くて、えっちで……ああ、もう!!! 


 本当にずるいや、美鈴は!!! 

 本当に、もう……大好きになっちゃうよ、美鈴の事!!!



 ☆


「ただいま~」


「ゆ~ず~!!! どこ行ってたの遅い~!!! お姉ちゃん死んじゃう、柚がいないとダメなのに~!!! ゆ~ず~!!!」

 美鈴と別れて数十分、火照った気持ちを抑えながらゆっくり家に帰ると、キレイな顔を真っ赤にした姉ちゃん―手塚繭26歳が、その豊満な身体を揺らしながら、俺めがけてすごいスピードで突っ込んでくる。


「いや、ちょっと色々……うわっ、酒くさ! どんだけ飲んだの!」


「う~、良いじゃんゆず~! ゆずがいないから、寂しかったの~……ん? んんん? ん?」


「いや、関係ない……って、どうしたの? どうしたの、姉ちゃん?」


「ん~、ゆずから嗅いだことない女の子の匂いがする~……ゆずから、お姉ちゃんの知らない匂いがするぞ~? ゆず、浮気したの? 浮気したの、ゆず?」


「……え?」



 ★★★

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