家出少女!?

 詳しく聞くと、南波という女の子は春風さんの妹ではないようだ。いったい、どういうことなんだ?


「こ、この男は誰なのよ、姉ちゃん」

「この人は同じクラスの人。さっき釣り堀に落ちちゃってさ」

「そうなの!?」


「ていうか、南波。勝手にお風呂を使わないでよ」


 摘まみだされる南波。

 ちょ、そんな裸でっ。


 俺は背を向けた。

 さすがに年頃の女の子の裸とか刺激が強すぎる。


「なあ、春風さん。あの子は誰なんだ?」

「ああ……ごめん。言うの忘れてたわ。あの子は『西崎 南波』っていうの。マキの妹」

「そうなの!? なんで春風さんの家にいるんだよ」


「家出中なんだってさ」


 家出かよ。

 どうやら、姉と喧嘩中らしく……今は春風さんの家でお世話になっているとか。そんな事情があったとはな。


 少しして、ようやく風呂を借りれた。


 しかし……脱衣所に西崎妹の下着が残されたままだった。……これ、うーん……このままにしておくか。下手に触ると犯罪者になりかねん。


 俺はびしょ濡れの服を脱ぎ、別のカゴに置いた。


 バスルームに続くスライドドアを引くと、広々としたミニ温泉があった。

 ここまでデカいとは。


 四、五人は余裕で寛げる。


 浴槽は、旅館にあるよなヒノキみたいなヤツ。ガチすぎるだろう。



 俺はシャワーを借り、冷え切った体を温めた……。



 * * *



「――ふぅ」



 あれからニ十分ほど寛いだ。

 サウナまであるとは思わなかった。どんだけ金持ちなんだか。


 脱衣所に戻ろうとしたところ――


 そこには西崎妹がいた。裸で。



「「――――」」



 見つめ合って、時を止める俺と西崎妹。お互いに顔を赤くするしかなかった。



「ちょ……」

「まだいたの、ヘンタイ!!!」


「いたのっていうか、君、摘まみだされたはずでは」

「し、仕方ないでしょ……。下着を忘れていたんだもん、なしで過ごすの……スースーして変な気分なの」


 なるほど――って、だからってこんなタイミングで現れるとか……。


 心臓バクバクで死にそうだ。



「お、俺はあっち向いてるから……さっさと着替えてくれ」

「……くぅ。ヘンタイと一緒とか! 仕方ない」


 観念したのか西崎妹は着替え始めた。

 ゴソゴソと衣擦れする音が鼓膜を刺激する。……なんかエロいな。


「…………」

「着替え終わった。じゃ、ごゆっくり……」


 やっとか。

 これでようやく、落ち着きながら着替えることが出来る。――って、俺は着替えないんだっけ。忘れていた。どうしようか。


 頬を掻いていると西崎妹が顔を出した。


「な、なんだ!?」

「ひとつ言い忘れていた。カゴに入ってる浴衣を使っていいってさ」



 着替えを用意してくれたらしい。



 * * *



 浴衣に着替えた俺は、リビングへ向かった。

 すると春風さんが振り向いて微笑んだ。


「会長、似合ってるじゃん」

「まさか浴衣とはね。すげぇ高そうだけど」

「うん、それ良いヤツだよ。パパのヤツだけどね」


 やっぱりな。そんな気はしていた。

 触り心地が最高に良いし、色彩も美しい。これ一着で万単位は確実だろうな。


「お風呂、ありがとう。でも、西崎の妹さんが……」

「ああ、気にしないでいいよ。南波には後で言っておくから」

「一応、謝っておいてくれ」

「分かった。さて、お腹空いたでしょ。ご飯作っておいたからさ」


「マジ? 春風さんの手料理?」

「うん、良かったらだけど」

「もちろん、いただくよ」

「良かった。じゃ、持ってくるね」


 わぁ、楽しみだな。春風さんの手料理。

 俺はワクワクしながら掘り炬燵こたつに腰を下ろした――のだが。

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隣の席の白銀ギャルに拉致られる話 桜井正宗 @hana6hana

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