第16歩 合流、そして出発 割と強引な感じで

 今日もまた、有可は戻橋の下を撮っている。もう、諸々思い出したのに。撮っても意味が無い事など、わかっているのに。それでも、習慣となってしまったのか、撮らずにはいられない。

「うむ。やはりここに戻っておったか、ユウカ」

 後ろから声をかけられ、有可はハッと振り向いた。

「……わらび……」

 昨夜、拗ねたような態度を取ってしまったことを思い出し、少々気まずい。無意識のうちに、肩を竦めた。……が、その両肩をわらびがガシッと掴む。

「え? おい!」

 何をするんだ、と言いかけた有可に対し、わらびはにやりと笑う。

「悪いが、撮影は後にしてもらぬか? 人を待たせておる」

「へ? 人?」

 聞き返している間にも、わらびは有可を引っ張って、橋の上へと連れて行く。そして、そのまま堀川通を北へ向かって歩き出した。

「お、おい! どこ行くんだよ? ……と言うか、待たせてるって誰を?」

「会えばわかる! と言うか、行けばわかる故、今は急ぐぞ! 二人とも大らかな御仁ではあるが、それでもあまり無礼な振る舞いをすると後が怖い!」

「二人も待たせてる!? ……と言うか、後が怖いって……いや、その前に肩から手を離してくれよ! 自分で歩くから! なんなら走るから!」

 そこまで言って、やっとわらびは有可の肩から手を離してくれる。そして、二人揃って朝の堀川通を足早に北上していった。

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