第43話

「そう……それならいいんだけど……」

 

 僕の誤魔化し方が下手なのだろう……全然僕の誤魔化しに誤魔化されることなく僕に対して疑うような視線を向けてくる桜。

 

 ぐぅー。


 そんな桜の疑いを誤魔化すにはどうすればいいか……それを悩んでいた僕のお腹が大きな音を立てる。


「あっ……」

 

 僕が琴美に監禁されていた部屋から救出され、ここに連れてこられてからどれくらい経ったのか。

 僕にはわからないが……そこそこの時間が経っていたのではないだろうか?

 今、僕は良い感じにお腹が空いていた。


「あっ!そうだよね!お腹空いたよね!」

 

 僕のお腹の音を聞いて、桜は笑顔を浮かべて立ち上がる。

 どうやら僕の拙い誤魔化しの必要もなく、桜の興味は僕の不可解な態度から僕の空腹へと動いたようであった。


「うん。お腹空いたかなぁ」


「わかった!じゃあ、ご飯持ってくるね!」


「うん。お願い」

 

 桜は僕の言葉を聞いて頷き、部屋から出ていった。

 おそらく僕の料理を取りに行ってくれたのだろう……僕は動かないでいて方が良いよね?


「……さすがに口移しとかじゃないよね?」

 

 僕は琴美と過ごした時の……最悪の食事時間を思い出しながらぽつりと絶対にありえないことだと理解しながらも思わずそう言葉を漏らしたのだった。

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