第42話

「私はこの家のことを幼少期の頃から知っていたわ……でも、お兄ちゃんがここまで何も知らされずに育ってきたのかは……ちょっと私も知らないわね。私もずっとお兄ちゃんにこの家のことは教えないように言われて育ってきたから。特に理由に関しても思い当たる節はないわね」


「そうか……」

 

 僕は桜の言葉に頷く。


「これ、聞いたら普通に教えてもらえるものだったりしないかな?」


「多分、教えてもらえないと思うかなぁ……私も少し前に聞いてみたけど、教えてもらえなかったし」


「えぇ……そうなのか。じゃあ、無理か」

 

 桜でも教えてもらえないなら僕に教えてくれるはずもないだろう。


「じゃあ……なんで急に僕はこの家にお呼ばれしたんだ……?なんか僕にやってほしいこともであるのか?」


「あっ。それはお兄ちゃんがあのゴミに監禁されたからだね。お兄ちゃんに何らかの理由があって家のことを教えられていなかったとしても、お兄ちゃんは我が家の人間。監禁されるなんてありえない!もう二度とこんなことがないようにするためだね」


「……」

 

 ゴ、ゴミ……僕は桜のあんまりな琴美の呼び方に頬を引き攣らせる。

 いや、でも琴美は僕を監禁した犯罪者であるし、その呼び方は妥当なのか……?

 

 ちょっと待て。

 今更ではあるけど、僕が助けられた後、琴美はどうなったのだろうか?

 普通に警察に捕まったのだろうか……でもなぁ、なんか銃声やら爆発音とか聞こえていたし、警察から事情聴取を受けていたりもしないしなぁ。

 なんか普通に警察に捕まりました!で終わっていないような気がするんだよなぁ……。


「……」

 

「ん?」

 

 桜に聞いてみたい内容ではあるけど……なんか聞いちゃいけないような気がするから聞かないでおこ。

 琴美に監禁されるまで彼女の好意に気づかなかったこともあり、ポンコツ説が出ている僕のセンサーが危ないと告げている。


「何か質問したいことがあった?」


「い、いや……ない、かな」

 

 僕は表情を引き攣らせながら、なんとか誤魔化すのであった。

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