第30話

「はぁー。何なんだよ。もう……」

 

 琴美の居なくなった部屋の中で。

 僕は深々とため息を吐き、途方に暮れる……正直に言うと、監禁されるのは別に良い。

 元来の僕は引きこもり属性である。

 琴美が管理し、僕のお世話をしてくれるというのであれば別に構わない。

 しかし、ここにゲームがないのは僕にとっては死活問題であった。


「せめてスマホさえあれば……」


 そう思うも、残念ながら僕の手元にスマホはない。

 スマホどころか何もない。

 僕の手元にあるのは今、着させられている僕の知らない服だけである。

 

「……はぁー」

 

 僕は深々とため息を吐き、寝返りを打つ。

 すると聞こえてくるジャララという鎖の擦れる音。


「……どうしよ」

 

 ここからどうすればいいだろうか?

 というか何が出来るだろうか?今の僕に。


「ふんふんふーん」

 

 僕が悩んでいる間に扉の向こうから上機嫌な琴美の鼻歌が聞こえてくる。

 そして、それはその音はどんどんと近づいてくる……。


「碧衣ー!ご飯出来たよー!」

 

「……ぁあ。うん」

 

 僕はそれに対してなんとも言えない感情を抱えて頷くことしか出来ない。

 上機嫌な琴美の手には御盆の上に乗せられたご飯


「えっと……どう僕は食べれば良いの……?」

 

 僕の両手には手枷が嵌められており、鎖に繋がれている……この状態でちょっと食事するのは大変そうであった。


「ふふん。私が食べさせて上げるからね!」


「……あぁ。うん……お願……は?」

 

 お茶碗よりよそったご飯を取る琴美の箸。

 それをはさも当たり前のように琴美は自分の口に含む。


「えっ……?僕のじゃなッ!?」

 

 何をトチ狂ったか。

 ベッドに寝っ転がる僕へと覆いかぶさった琴美は僕の口と己の口を重ね合わせ……そのままさっき口に含んでいたご飯を僕の喉へと流し込んでくる。


「……は、はぁ!?な、何ッ!?」 

 

 僕は慌てて琴美から離れ、困惑して声を上げる。


「何って……口移しだよ?何言っているの?」


「は、はっ……?」

 

 僕はさも当たり前のように告げる琴美に僕は困惑することしか出来なかった。

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