第29話
僕の前に現れた琴美。
「い、一体何のつもりなの……?」
そんな彼女に僕は震える声で尋ねる。
「何?って……碧衣が悪いんだよ?浮気するからさぁ……」
「う、浮気……?」
僕は生まれてこの方、彼女なんて出来たことはない。
浮気なんて言われる筋合いはない。
「そうだよ……私というものがありながら、間宮なんていう雌豚と仲良くするんだから……」
「え?別に僕は琴美の彼氏ってわけじゃな」
「ん?」
「……え、いや……」
僕は琴美の笑顔に気圧され、言葉がつまる。
くきゅぅ……。
そんな僕のお腹が小さく鳴り響く。
「……ぅ」
いつから僕はここで寝かされていたのだろうか?
僕のお腹はからっぽで空いてしまっていた。
「あっ。そうだよね!お腹すいたよね!私ね!ご飯作ってたの!今から持ってくるね……」
「あっ。うん」
僕は嬉しそうに話す琴美を前に頷くことしか出来ない。
「じゃあ、待っててね!ふふふ。私、碧衣のために料理も頑張って練習しているの!練習の成果見せるから、楽しみにしててね!」
「う、うん……」
琴美は扉へと手をかけ、その外へと出ていく。
「ふんふんふーん」
気分良く歌っている琴美の鼻歌の音がどんどん遠くなっていく……。
「はぁー」
僕はその音が聞こえなくなったタイミングで深々とため息を漏らす。
張り詰めていた緊張の糸が解け、僕は体をベッドへと倒す。
ジャララ。
そんな僕の耳に容赦なく聞こえてくる鎖の擦れる音。
「もう……本当に何なんだよ……」
僕は現状を前にただただ困惑し、恐怖を覚えるしかなかった。
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