第26話
午前中の授業を寝て過ごした僕はお昼の時間で美味しくお弁当を頂いた。
「んっ。美味し」
内容はかなり凝っており、冷凍食品などを一切使わず、全て手作り。
栄養のこともよく考えられている実に素晴らしいお弁当となっていた。味も美味しい……こんなに作れたんなら、僕が間宮さんの家で作る必要なかったじゃんね。
「……俺は未だに現状が信じられない。あの碧衣がお昼の時間寝ることなくご飯を食べているだけでも驚きなのに、そのお弁当を作ったのが氷の女王たる間宮さんだぞ?信じられない」
「だとしてもこれが真実なのだよッ!」
僕は未だに信じられない様子の我空に対してそう告げる。
「おっ?」
そして、口に弁当を運ぼうとしたところで、僕のことを凝視している琴美が廊下にいることに気づく。
「……な、なぁ」
「琴美がいるねぇ」
「……めっちゃ睨んでね?」
「睨んでいるねぇ」
何故だろうか?
先程から背筋に冷たいものが走ってしょうがない。
僕の生存本能が今すぐにでもこの場から逃走しろと叫んでいる。
「……は、入ってきたぞ」
無言のまま、教室へと入ってきた琴美が僕へとどんどん近づいてくる。
「そのゴミ。誰が作ったの?何を食べているの?」
「私のですが、何か?」
何故か自分の席でもないのに僕の前の席でお弁当を食べていた間宮さんが立ち上がって僕を庇うようにして琴美の前に立つ。
「あ?」
「あ?」
信じられないぐらい低い声を上げる間宮さんと琴美が共に睨み合い、一触即発の空気となってしまう。
他のクラスメートたちは一目散に教室から逃げていく。
「しゅ、修羅場だ……マジの修羅場だ。いつかはこうなると思っていたんだ俺は……ッ!」
「はわわわわわわ」
なんで二人が睨み合っているのか。
なんでこんなに体が震えるのか。
何もわからない僕は現状を前にただただ震え、視線をきょろきょろさせるので精一杯だった。
「お、俺も逃げれらない……」
「なんでこんなことになったのかわからないけど、逃さないから……ッ!」
僕と我空の前に二人が立っている。
僕たち二人は決して逃げられそうになかった。
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