第16話
一体どれくらい僕は寝ていただろうか?
「ふわぁ……」
気持ちよく睡眠していた僕は体を起こし、心地よい目覚めを作り出してくれた神へと感謝した。
「おはよ」
「……ッ!?」
その神への感謝は僕のすぐ隣にいた琴美の一言ですべて吹き飛んでしまう。
「なんで……ッ!?」
何故彼女がさも当たり前のような表情を浮かべて僕の隣にいるのかぁーあっ。うん。
そういえば琴美は僕のベッドに入り込んできていたんだったね。
「もう!寝すぎだよ!既に時刻は7時近くだよ?夜ご飯の時間になっちゃったよ」
「……いつものことだよ」
いそいそと琴美のいるベッドから脱出した僕は自分の定位置であるゲーミングチェアへと腰を下ろし、琴美へと言い放つ。
「もー、一緒にどこか行きたかったのに。もう行く時間ないじゃん」
琴美は僕のベッドの上で不満げに頬を膨らませる。
「せめてさ!せめてさ!どっか一緒に食べていかない?」
「えー。外に出るの面倒なんだけど」
「良いじゃん。自分で作るよりは面倒じゃないって思お?」
「……」
いつも料理を作ってくれている桜はいない……自分で料理を作るのにはそこそこ時間もかかるだろう。
「いや、でも別に僕は料理が嫌いってわけじゃないしな」
僕の趣味はゲームと料理だ。
別に料理を作ることは嫌いじゃない……何故か桜が自分が作ると譲らないため、任せているが、彼女が分担を望めば僕は快く受け入れるだろう。
「おいしいものを食べるのは嫌いじゃないでしょ?」
「外に出るのは嫌いだけど……」
「……あぁー!もう!私は碧衣と一緒にご飯を食べたいの……ダメ?」
こちらを見つめる少しだけうるんだきれいな琴美の瞳。
「うん。ダメ」
「ムキーッ!」
あっさりと断った僕に対して琴美は怒りを露わにし、敵意をむき出しにしてくる。
「断っちゃダメ!碧衣は絶対に私と行くの!」
「はぁー」
僕はそんな琴美を見て深々とため息をつく。
……昔から、琴美は折れることがなかった。毎回折れていたのは僕だ。
「わかったよ」
僕は碧衣の言葉を受け入れる。
「やりぃ!!!ねぇねぇ!どこ行く?」
「うーん。そうだなぁ……どこがいいかな」
いくらまだ夏だとは言え、流石に夜は少しだけ肌寒い。
僕は食べに行く場所についてを考えながら床に落ちている薄いパーカーを拾って羽織る。
まぁ、服装はこれで良いだろう。
「まぁ、それは実際に街を歩いて決めようか!」
「うん。そうしようか」
外に出るのが面倒。
それは変わらない……しかし、幼馴染である琴美との外食にワクワクしている自分もいるのも確かであった。
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