第15話

「んぁー。ということで乙ですー」


『うん。お疲れ様ぁ。じゃあ、おやすみぃ』


「はーい」

 

 リテン氏との通話を切り、ゲーミングPCの電源を落とした僕は真っ暗な部屋の中で体を伸ばす。

 僕の座る椅子が軋み、嫌な音を鳴らす。


「よっと」

 

 僕は立ち上がり、すぐそばに置かれているベッドの方へとダイブする。


「ふー」

 

 モゾモゾと。

 僕は真っ暗中、ベッドの上の布団に手を伸ばしてそれらに包まっていく。

 固く閉ざされているカーテンの外は既に朝日が登っている頃……これからが僕の睡眠時間である。


「……おやす」




「おっはよーッ!!!」

 

 

 

「まぶし!?」

 

 今まさに閉じようとしていた僕の瞳を明るい電気の光が攻撃する。


「目が、目がぁ〜!!!」

 

 僕は己の目を抑えて悶え苦しむ。

 

「……ちょっと大袈裟じゃない?」


 僕に元気よく挨拶し、電気をつけるという悪行を果たした人物。

 それは僕の幼馴染である少女、鈴木琴美だった点々なんで彼女がこんなところにいるのだろうか?

 意味がわからない……。


「……なんで僕の家に?」


「いや、普通に鍵空いたから入っただけよ」


「あっ……」

 

 確かに僕は鍵を閉めるのを忘れてしまっていた……それなら仕方ない……。


「いや、しかたなくないよ。何で入ってきているの?」


「碧衣とどこか遊びに行きたいな、って思って」


「……僕はこれから寝るんだけど」


「え?もう朝だよね?」


「うん。朝だよ?」


「起きる時間だよね?」


「寝る時間だよ?」


 僕と琴美の意見はひたすらに平行線をたどる。


「「……」」

 

 二人して沈黙し、互いに向き合って沈黙する。


「……よし」

 

 琴美は何か思いついたのか、電気を消して僕の方へと近づいてくる。


「やっぱり朝は寝る時間だよね!私もベッドの中に入る!」

 

 一切の躊躇なく琴美は僕のベッドの中へと入ってくる。


「ちょ、ちょ!?」

 

 僕の狭いベッドの中へと強引に入ってきた琴美と元々中にいた僕の距離はかなり近く、彼女の体の柔らかさが僕へとダイレクトに伝わってくる。


「えへへ……」

 

 琴美が少し動けば彼女の良い匂いが僕の鼻孔をくすぐる。


「……顔、赤いよ?」

 

 僕のすぐ下。

 いたずらっぽい笑みを浮かべた琴美が僕の顔を優しく撫でる。


「寝ないの?」


「お、お、お、おやすみッ!!!」

 

 僕は琴美の言葉に対してそう返し、ただただ目を瞑ることしか出来なかった。

 眠れるわけがない!そう思った僕であったが、慣れない家庭教師という仕事に疲れいたのか、あっさりと僕の意識は闇へと閉ざされていったのだった。

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