7 杏奈の決断

 モナカには悪いけど、何度聞かされても幽霊の存在など信じられない。したがって、吉野りんかが警告文を送りつけてきた、というモナカの説を採用するつもりはもうとうないが、危険が迫っているというのは、たしかかもしれない。


 一回目の警告文は料理のなかに押しこまれていた。この時点では誰に向けたメッセージなのか判然としなかったが、二回目の警告文によって疑問の余地はなくなった。杏奈の部屋、四〇四号室の郵便受けに投函されていたからだ。


 三回目は、四〇四号室の玄関ドアに〈出ていけと言ったのに〉と赤いスプレーでメッセージが残されていた。このとき、鳩の顔の赤ずきんが階段の陰からじっと杏奈を見つめていたのはだろう。


 こんな具合に、回を重ねるごとに状況がエスカレートしている。四回目があるとしたら、そのときは相手が実力行使に出てくるかもしれない。わが身に危険が迫りつつあるのは事実だ。そう考えたほうがいい。そこで杏奈は、ひとつの決断を下した。


 第四女子寮から出ていく。


 悔しいけれど、まずは自分の身を守らないと。だから、出ていくことにした。

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