6 封印された小説③

 モナカがソファから腰を浮かした。


 玄関まで見送りに出る。モナカはドアノブに手をかける前に杏奈にふり返った。


「それはそうと、くれぐれも気をつけてくださいね」


「……気をつける? なにに? 吉野りんか?」


「ちがいます。すでに申しあげたように、吉野りんかは悪い幽霊ではありません。それがわたしの考えです。あの一連の警告文が吉野りんかの仕業なら、杏奈さんをこの女子寮から遠ざけたい理由があるはずなんです」


 遠ざけたい理由ねぇ……。「モナカにはその理由がなにかわかってるの?」


「わかっていません。ですが、悪い幽霊ではない吉野りんか先輩が心配されているのです。杏奈さんに、なにか重大な危機が迫っているのかもしれません。りんか先輩が杏奈さんにしつこく警告しているのは、そのためでしょう」

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