3 モナカの家族①

「わたしの父方の祖母は霊能力者で探偵だった。その話は前にしましたよね。父は祖母のような霊能力者ではありませんでしたが、子どものころから祖母の仕事を近くで見てきたので、幽霊の存在を疑ってはいませんでした。むろん、多くの人にとって幽霊はファンタジーです。杏奈さんもそう思っているのでしょう?」


 思ってはいるが、杏奈は返答にきゅうした。モナカの父と姉が死んでいる。その話はすでに聞かされていたが、というのは初耳だ。


「父はそのファンタジーを科学的に証明しようとしたざいの研究者でした。祖母が亡くなったあと、父は祖母の代わりに探偵として幽霊関係の事件解決にも尽力していたのです。父は霊感商法などのインチキと戦っていた祖母の意志を引き継ぎ、幽霊関係の仕事では報酬をいっさい受け取らない方針も継続していた良心的な人でした。

 姉はそんな父の助手でした。

 ある日、父と姉は依頼を受けました。とある館に強力な悪霊が取り憑いている。悪いことをしている。殺人まで起きている。どうにかしてほしい。そんな依頼でした。父と姉はこれまでどおり無料で依頼を引き受け、問題の館に泊まりこみました。そして、悪霊に殺されました」


 とんでもない話になってきた。てんで信じられないのは相変わらずだが……。


「父と姉の死は、表向きは自殺として処理されました。ふたりとも同じ密室で首をっていたからです。そして警察が捜査した結果、奇妙な事実が判明しました。先に首を吊った父を、姉は助けようとしたみたいです。父はロープで首を吊ったそうです。姉がその父を助けようとして、ロープから父の体を離そうと努力したこんせきが見つかったのです。

 ところが、その直後に姉もロープで首を吊ったみたいです。警察はそのことを奇妙に思いながらも、現場が完全な密室だったこと、推理小説めいたトリックが使われた形跡がまったく見られなかったことがわかると、ふたりの死を自殺として処理しました」


 モナカの眼差しは真剣そのものだ。嘘をついているようには見えない。でも……。


「そんなバカなというのが、わたしの本音です。父と姉は殺された。ふたりが退治しようとした悪霊に。その悪霊によって、まずは父が無理やりロープで首を吊らされた。同じやり方で姉も殺されたのです」

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