1 地下倉庫②
「……モナカ」
倉庫にいたのは、体操服姿のモナカだった。
「スウェットの寝間着は洗濯中でして。これ、小学生のときのやつです」
杏奈の視線から察したのだろう。こちらからなにか訊く前に向こうが説明してくれた。
「……小学校のときの体操服、着れるんだ。わたしは、ちょっと無理かな」
サイズ的に難しい。心情的にも。
「わたし、小六で一六五センチでした。中三で一六七センチ、そこで成長ストップです」
杏奈は一五八センチ、あと数センチは背が伸びて欲しかった。
「中高のときの体操服も持ってきています。体操服も寝間着にしているんです」
「モナカは、ここでなにしてるの?」
「ハロウィンの衣装探しです。杏奈さんもそうなのでは?」
そのとおりだ。倉庫内には木製の棚がところせましと何台も何列にもわたって配置されている。モナカは部屋の中ほどにある棚の前に立っていた。
別荘時代に保管されていた宝石や美術品はとっくの昔に売却ずみ。倉庫は展示室同様に寮生の私物を保管する物置状態なのだ。服や靴、家電製品など、かさばりそうな大きめの物が放りこまれており、コスプレ用の衣装だけでも四十着以上あるという。歴代の寮生たちがハロウィン用に買った衣装が大量に。杏奈は明日のためだけに衣装を買うつもりはない。ここで見つくろって節約だ。若葉も佐絵も倉庫にある衣装を着ると言っていた。
「あ――あった」
やっと見つけたという様子で、モナカが棚の奥から赤黒いカラーリングの衣装を取りあげた。ゆったりとしたフードとマント付きのドレスを。衣装の上に載っていた手袋も。
「マジ……!? 赤ずきんにするの?」
杏奈は
「ええ、知っています。八年前のハロウィンで吉野りんかは赤ずきんの格好をしていた」
モナカは赤い目の鳩マスクも手に取った。「わたしも、りんか先輩に倣います。というより、りんか先輩になります。わたしの仮装は〝八年前の吉野りんか〟です」
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