第50話
「おー、こりゃでけぇなぁ。おはるさんのおっぱいよりでかいんじゃねぇか?」
「変なこと言わないでくんなよ!」
「あいたたっ、わりぃわりぃ」
夏樹の頭をすぱーんっと叩いてもへにゃっと笑うだけだ。叩くと普通ならこっちも手が痛くなるもんだが、全く痛みが無い。大きく音が鳴るだけで、痛みがない。咄嗟に力を分散させてるもんだから、この人はやっぱりすごいってのがわかるんだけど、発言がひどいもんさ。
あたいが近くにいると胸のほうに視線がいっちまうようだから、少し離れてたほうが良さそうだね。
「おはるさん何処行くんだ?」
「あんたがあたいの胸ばかり見るからだよ!」
「おっきいおっぱいがあったらつい見ちまうんだ、わりぃ!」
「大声で言わないでくんなよ!」
あたいのほうが恥ずかしくなっちまうよ。なぁんにも恥ずかしくなるようなことしてないってのにね。
大ねずみは夏樹が編んだ縄で縛りあげて、カゴに入れられた。
ヒゲと一緒に入れるなんて、仲間は死んだから諦めろって見えるから怖いよ……。そういう意味ではないと思うんだけどね。
「さて、リーダー格を捕獲したし、ヒゲを引っこ抜いたから、大ねずみ達も畑に近寄らなくなっかな」
「全部引っこ抜いたのかい?」
「おう。貴重なものは補充できる時に補充しねぇとな。これ、魔女の店で買うとけっこう高いんだよ」
「そうなんだねぇ」
「そっ。これでおはるさんの受けた依頼は完了だな。そんじゃ、報告に行くか」
「あのジジイが何者かってことだね」
いけ好かないじいさんの元へ行く途中で、魔法薬の効果が切れて、あたいは元のサイズに戻った。夏樹の肩に乗って移動するほうが楽で良いんだよね。
「おはるさんのサイズが戻ってくれて助かったよ」
「どうしてだい?」
「だって、あんなにおっきいおっぱいをじいさんに見せつけるには刺激が――痛い痛い! ごめんってぇ!」
「あんたねぇ、学習しなよ」
頬を引っ張っておいた。
殴るよりも確実にダメージを与えられるのは引っ張るだとわかったよ。力を流しようがないからね。夏樹の仕置きにはこれが一番さ。
さて、じいさん家に着いた。妙に静かだ。こりゃあ、夏樹の言っていたとおりに悪魔の類が気付いて逃げちまったか? でも、夏樹は気付いていないようなふりをしていたわけだし、どっかであたいらの会話を聞いてたのかもしれないね。
と考えたのは無駄だった。じいさんは家の中にいた。読書してりゃ生活音も聞こえてこないか。
「大ねずみの退治終わったから報告に来たよ」
「おー。早いのぉ。さすが夏樹先生じゃ。ありがとう」
「おれじゃなくて、おはるさんが片付けてくれたんだ。お礼を言うならおはるさんに言ってくれ」
「このピクシーが? ほーん。まっ、一応礼してやろう。ありがとよ」
「ど、どういたしまして」
殴りたくなったところを夏樹になだめられた。
こいつが悪魔ならぶっ飛ばしちまって良いはずさね! ジジイに成り代わってんだからね!
「ところで、じいさん。聞きたいことがあんだけど、良いか?」
「夏樹先生が聞きたいことってのはわしにわかるかのぉ」
「わかるよ。あんた、もう死んでるらしいな。役所に死亡届出てるんだってよ。ギルドから連絡が入ったんだ。死者ならそれ相応のところへ案内してやんなきゃいけねぇし、悪魔なら身分証の提示してもらわないとな。で、あんたは何者だ?」
「バレちゃしょうがねぇな! 俺様は――ぎゃああっ!」
ジジイの皮をがばっと脱いで、姿を現した魔物は体から白い煙を上げて苦しみだした。夏樹の手には空の試験管が握られている。一瞬で魔法薬ぶっかけたのかこの人!?
煙が消えたと同時に、魔物はどうっと倒れた。
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