よつばのしあわせシロップ

第48話

　早速畑へ向かった。まずは依頼主に挨拶しておかないとね。ってわけで、夏樹と一緒に畑の持ち主の家に向かった。

「あー！　夏樹先生じゃないですか！　先生ほどの人が来てくれるなんて、助かります！」

　依頼主は見るからに人が良いおじいさんだ。夏樹の手を握って喜んでいる。やっぱり夏樹は腕がたつんだね。おじいさんにあたいの姿は見えているはずなのに全く何も言ってきやしない。一応、依頼を受けたのはあたいなんだってのに。

「おれは助手で、今回の依頼を受けたのはこっちのおはるさんだよ」

「へ？　ピクシーじゃないですか！　使い魔ですかい？」

「違うよ！」

「あいだっ！　何だこのピクシー！？」

「おはるさん、叩いちゃダメだって。あんたも、使い魔って決めつけるのは駄目だ。とりあえず、詳細を聞かせてくれな」

「はい……、すみません」

「おはるさんも謝ろうな」

「ごめんね」

　謝ったところで、おじいさんから詳しい話を聞くことができた。

　畑を荒らしているのは、大ネズミらしい。雑魚モンスターだけど、数が多いと厄介になる相手だね。だけど、ネズミならネズミ捕りでも置いたら解決できる気がするもんだ。

「ネズミ捕りは試したのかい？」

「試したに決まってんでしょ。解決できてないから、ギルドに発注かけたんだ」

「あんたはあたいに喧嘩売ってんのかい？」

「はいはい。おはるさんもおじいさんも抑えような。大ネズミのヒゲは貴重な呪物（フェティッシュ）になるから、貰っていくけど良いよな？」

「もちろんです！　わしは畑を荒らすネズミがいなくなければええんですから！」

「大ネズミは夜に来るから、しばらく畑の様子を見させてもらうか」

　おじいさんとあたいの相性が悪いと察した夏樹はすぐに家を出ることに決めた様子だった。さすが色んな人と関わるだけあって、判断が早いね。

　それにしても、あのジジイはむかつくやつだったよ！

「あのジジイ、あたいには報酬払わないとかないよね？」

「そりゃねぇよ。払わないなら、きっちり抗議してやっから」

「夏樹がそう言ってくれるなら安心だね」

「だけど、殴るのは駄目だぞ。下手したらピクシー討伐の依頼されちまう」

「仲間に迷惑かけるのは嫌だね。気をつけるよ」

　ただでさえピクシー種は愛玩用だとかで密猟される時もあるってのに、討伐までされちまったら大変さ。

　どの種族も平等に過ごせる世界だとか言っても魔族は魔族で迫害されるもんだから、嫌なもんさ。きちんと書類持ってりゃ良いだけの話なんだけどね。

　さて、畑はけっこうな広さだ。これだけ広いから荒らされてる場所もじわじわ広がっているようだね。夏樹も「けっこう広いなぁ」と言ってたくらいさ。

「で、おはるさんはどうする気なんだ？」

「大ネズミの群れにはリーダー格がいるはずさ。そいつをぶっ飛ばせば良いってわけさね」

「そう簡単に終わる話なら良いけどな……」

　呟きつつ、、夏樹は腰の魔法薬を一本飲み干した。

　一瞬前までは感じられなかったのに、今は存在を主張するように、魔力が渦巻いている。夏樹の目が濃い緑色に光って見えた。こんなに魔力の保持量が増えるってどれだけすごい薬作ってんだこの人……！

「思ったよりも数が多いな……。おはるさん、これ、飲んで」

「あ、あい！」

　夏樹に渡された蛍光色の薬を口に含む。あたいサイズの薬瓶なんていつの間に準備したんだか。

　体がカッカッと熱くなる感覚がする。ボフンッと軽い音と共に、あたいの体が夏樹と同じくらいに大きくなる。

「おっぱい……」

「あんた何処見てんだい！」

「いたたっ！　わりぃわりぃ！　おっきいおっぱいがあったからつい！」

「あんたねぇ……」

　すごい薬作れるわりに、こういうこと言うから、台無しさね。