第40話
先日のリラクゼーションサロンに向かえば、すぐにサキュバスが出迎えてくれた。なんとなーく、さっき見たサキュバスと似ているような気がする……。
「ねえあんた、サキュバスの知り合いいないかい?」
「うちはサキュバスやから、サキュバスの知り合いはいっぱいいるなの」
「おはるさん何聞いてんだ?」
「いや、ちょっとねぇ……」
そりゃサキュバスにサキュバスの知り合いがいるか聞いてもいっぱいいるに決まってるさね。あたいのバカ! おばかさん!
夏樹にまでキョトンとされたもんだから、ちょっと恥ずかしくなってきちまったさ。
「あー、わかった。小焼が連れてるサキュバスと知り合いか聞きたいんだな?」
「そう! それさ!」
「小焼っていうと、神父様なの。神父様がサキュバスを連れてるなの?」
「そうなんだよ。あいつ、空色の髪に天色の瞳のサキュバスを連れてるんだ。心当たりねぇかな?」
「珍しい色の子なの。希少種なの。うちの知り合いではないなの。でも、知り合いになりたいなの。うちの店に来てほしいなの!」
「それは神父に話しとくよ」
どうやら知り合いではないらしい。
それにしても、サキュバスにも希少種っているんだねぇ。……って考えてみたけんど、あたいが知ってるサキュバスはだいたい髪が黒か金だ。この子も珍しい気がする。
「あんたも珍しい色なんじゃないかい?」
「そうなの。けっこうレアなの! 染めてると間違えられるけど、うちは染めてない天然なの! だから、とってもレアなの!」
「話が盛り上がってるところ悪ぃけど、依頼内容聞かせてもらえっかな」
「あ、ごめんね」
あたいが話をふっちまったばかりに肝心の依頼内容を全く聞いてないんだった。
夏樹に依頼するくらいだから、魔法薬に関するものだとは思うけど、エクソシストだから退治依頼の可能性もあるんだよね……。どっちなんだか。
「ご存知やと思うけど、サキュバスは精力を頂いて生活してるなの。せーえきを貰えたらフルチャージができるけど、ここはそういうお店ではないなの。リラックスしてもらうのが目的であって、えっちなことは駄目なの」
「真面目なんだねぇ」
「うちは真面目なの! で、施術には体力がとっても必要なの。お客様から精力をちょびっとずつ吸収してるけど、全然足りないなの。だから、代わりになりそうなものがほしいなの」
「なるほど、栄養剤のようなもんだな」
「そうなの! せーえきに似ていたら嬉しいなの! お願いしたいなの!」
「ちょうど、神父様にも同じこと頼まれてっから、考えておくよ」
「引き受けてもらえて嬉しいなの! 握手あくしゅー!」
夏樹の手を両手で握って、サキュバスのメイは嬉しそうに跳ねている。夏樹はでへへっと破顔してる。視線は完全に胸にいってるんだよ。あたいは頬を引っ張っておいてやった。
「痛いよおはるさん」
「あんたがメイの胸ばっか見てるからだよ!」
「見えるものなんだから見ちゃうだろー!」
「これはサキュバスの標準服なの。胸のおっきい子はここがもーっとわかりやすくなるなの。おっぱいの形がはっきりわかるなの」
「それって制服のようなものなのかい?」
「そうなの。サキュバス族に伝わる伝統衣装なの!」
伝統衣装なら変えようがないね。あたいもピクシーの服だし。花びらとか木の皮を色々して布にした伝統の技のやつ。
「ほーん。それじゃ、小焼の横にいた子もこういう服着てるんだな。今は修道女の服着てっけど」
「修道女の服は翼と尻尾が窮屈そうなの。やっぱりうちの店に来てほしいなの!」
「あいあい。伝えておくよ。そんじゃ、栄養剤の試作品ができたら持って来るよ。時間かかっから気長に待っててくれ」
「わかりましたなの。お願いしますなのつ!」
メイは頭をペコリと下げる。サキュバス用の栄養剤なんて作れるのかねぇ。
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