第39話

 草弄りもやっと終わって、工房で薬の調合をして、色々手伝ってやってたら、お昼さ。

 向こうもお誕生日会が終わったらしく、神父とサキュバスが並んで食事を取っていた。ああやって見ると、サキュバスじゃなくて修道女に見えるから、きっちり幻術使えてるんだと思うよ。翼も尻尾もツノも隠して偉いじゃないか。

 だけど、なんだか疲れてそうだね。話を聞いてみてやっかねぇ。今ならあたいの頭の上に四つ葉のクローバーが乗ってっから、姿が見えるはずだし。

「あんた、元気無いねぇ?」

「そりゃずっと精力を奪えてないからやの。せーえきだって搾り取れてないし……」

 そういえば、牛乳泥棒ってことで捕まったんだったね。男から精力を奪えてないなんとも可哀想なサキュバスさ。

 さっきまで聖歌を聞き続けていたくらいだから、エネルギー不足にもなっちまうと思う。

「だからって、うちの人は駄目だよ」

「別にダメンズエクソシストから奪おうなんて思ってないやの」

「ダメンズなんて言わないでくんな!」

「痛いっ!」

 あんたもダメダメ落ちこぼれサキュバスじゃないか! って言うところをグッと我慢して、頬を抓るだけで許してやる。もちもちした頬が本当におもちのようだった。焼いたらぷくーっと膨れそうなくらいのもちもちっぷりさ。食べたばかりだってのに、ちょいと腹が減っちまうくらいだよ。スイーツは別腹って感じだね。

 あたいの魔力がちょっと減ったような気もするから、サキュバスってのは、触れただけで魔力を奪えるのかもしれないねぇ……。それなら、神父をベタベタ触ってりゃなんとかなりそうなもんだけど、アレを触り続けるのは大変そうだ。夏樹ならおっぱい見せりゃずっと揉んでそうなもんだけど……、さすがにサキュバス相手だとそんなことしないかねぇ。だって、一応エクソシストだものね。

 夏樹は神父と何か話してたようだけど、終わったようでこっちに来た。代わりにサキュバスは神父の横に戻っていく。

「あの子、けっこう大切にされてるようだぞ」

「そうなのかい?」

「小焼はなんでもすぐに破壊しがちだからな……。形を保ってるだけ、すごいと思う」

「怖いこと言わないでくんなよ」

「サキュバスなんてすぐに肉片になりそうなもんだろ? だけど、あの子は形を保ってるから、本当に愛玩されてんぞ」

 形を保ってるってことで愛玩されてる判定になるの怖すぎやしないかい……。すぐに破壊するって話もなかなか怖いもんだけど。

「よし、そんじゃおれらはギルドに行くか」

「仕事かい?」

「まあ、そんなとこだな。魔法薬の納品もあっから」

 顔色が良くなっているサキュバスと舌なめずりをしている神父に挨拶をしてから、孤児院を出る。

 夏樹の車には既に薬品が詰め込まれていた。あたいが見ていない間に積んでいたらしい。あたいにも手伝わせてくれりゃ良いってのにねぇ。

 ギルドに着いて、薬品を運び出す。酒屋が使っているような箱に詰め込まれているから瓶が割れる心配はしなくて良さそうだ。台車を使って一気に運んでるところを見ると、夏樹もけっこう力あるんだねぇって感心する。

「お兄ちゃん納品ありがとー! はい、今回の売り上げだよ。受領印よろしくね」

「あいあい。ありがとな」

 兄妹で仕事の話してんのもなかなか面白いもんだね。ふゆは夏樹に書類を渡していた。あれは仕事の受注票だと思う。

「おっ。この前のサキュバスからご指名か」

「そうそう。メイちゃんね。お兄ちゃんに作ってほしいものがあるんだって。詳しいことは口頭で説明するから、お店に来てほしいって言ってたよ」

「そんじゃ、今から行ってみるよ。おはるさん行こう」

「あーい。そんじゃ、またね」

「うん。お兄ちゃんをよろしくね!」

 というわけで、街のリラクゼーションサロンへ向かうことになった。

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