第37話
子ドラゴンは夏樹に懐いているようで、一緒にボール遊びをしていた。
遠くから見ていると、夏樹がボールを取って来いさせられているようにも見えるねぇ……。ボール遊びで喜ぶ犬っぽく見えるよ。獣人だとしたら、犬だろうね。しかも豆芝犬って気がする。くるんと巻いた尻尾を振って喜んでるような感じ。……まあ、夏樹は人間だから、獣人ではないんだけど。
夏樹がドラゴンとボール遊びしている間にも、孤児院では子どもらが勉強してると思う。勉強していない時は遊んでるもんだけど、その遊びも学習要素のあるものだから、きっちり教育されてるって感じさ。妖精種の子ならあたいも相手できるもんだけど、ここにはあたいが手助けできそうな子はいなさそうだ。
「はぁー、つかれたー。休憩ー!」
「そんだけ走り回ってたら休憩しないとやってらんないさ。よく動いてるほうさね」
「小焼に引きずり回されることが多いから、体力だけは自信あるんだ!」
「前半は言わなくて良いと思うよ」
引きずりまわすが読んで字のごとく、物理的に引きずっているとしか思えないから、あの神父の筋力だけは気になることが多いもんだ。
子ドラゴンとの遊びを終わらせて、お世話をエルフに任せたら、次は庭で水やりだ。花壇のお手入れをする流れのようだね。クローバーもけっこう生えてるから、四つ葉があったら見繕いたいところさ。
特に姿が見えている必要も今は無さそうだから、四つ葉は外しておくかねぇ。
「あれ? おはるさん何処行った?」
「近くにいるから気にしないでくんなよ。すぐに反応するんだから」
「あはは、ついなぁ」
姿は見えないとしても、あたいがいるってことは感じ取れるくらいの力はあるはずなのに、気にするんだねぇ。あたいとしては姿が見えないほうがダラダラできるから良いんだよ。こうやって肩の上で大あくびしてても気付かれないからね。
夏樹はじょうろに水を汲んで、花に水やりを始める。スプリンクラーを設置するとか、水の魔法を使えばすぐに終わると思うけんど、あたいがいちいち口出しするようなことではないはずさ。本人もわかってるけど地道にじょうろで水やりしたいのかもしれないし。
長いホースがあるんだから、これを使えば一気に遠くまで水やりできると思う。水の補給にいちいち戻ってくるのも面白いし運動にはなりそうだけどねぇ。
「ホースで水やりしたらどうだい?」
「あー、すぐに終わりそうだけどさ、上手く水やりしないと土がぼこぼこになっちまうだろ? おれ、あれで小焼に説教されたんだよなぁ」
「やめようか」
「そのほうが良いな」
そりゃあホースの口を絞って霧状にするなりしないと、そのまま水をどぼどぼやったら、土がぼっこぼこになっちまうさね。
教会に畑があるくらいの土いじりが好きな神父からしたら激怒ものだろうに。
だとか噂をしていたらなんとやらさ。向こうから神父が歩いてきた。サキュバスも一緒さ。
「おっ。今日もサキュバスを連れてるんだな」
「傍に置くと便利ですからね」
何が便利なのかさっぱりわからないもんだけど、神父はサキュバスを気に入ってるようだね。夏樹が変な方向を見てたので頬を引っ張ってやった。
「あいたた、痛いよおはるさん」
「魅了されないようにしてやってんだよ」
「おれには
それはそうかもしれないけど、おっぱいが見えたらついていきそうだから、先に正気に戻してやっておかないとね。さすがに修道女服だから露出が無いもんだけど、サキュバスの標準服のように露出の多い服ならコロッといきそうだからね。
「サキュバスって何ができるんだ? リフレ以外に」
「愛玩ですかね」
「……おまえ、よく祭司できるよな」
「よく言われますが、できますよ」
隣のサキュバスが何か言いたそうな表情をしているから、愛玩してないのかもしれないね。可愛がってるからまだ生きてるんだと思うんだけどねぇ。すぐに畑の肥料にするような神父だとか聞いたもんだから、ちょい恐ろしいさ。
今日は誕生日会があるから来たとか。……あたいらは参加しないのかい?
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