第36話
食事が終わったら、風呂入って、とっとと寝たさ。
翌日。目覚ましが鳴ってるってのに、夏樹はむにゃむにゃ言いながら寝てる。
仕方ないから蹴って起こしてやったよ。ビクゥッと跳ねて起きたから面白かったね。
「おはよぉ……」
「おはよ! あんたねぇ、朝の祈りの時間過ぎてるよ。いつまで寝てるつもりなのさ!」
「そうは言ってもさぁ……」
と言いながら夏樹は寝ぼけ眼を擦っていた。
顔を洗って、着替えて、やっとしゃんとした姿になったかと思えば、寝癖がついたまんまだ。あたいでもこれはなおせそうにないから、今日は一日このままだね。幸いにも、普段から飛んでる毛があるから、目立ちはしないさ。
食堂で朝食を取る。子ども達のほうが夏樹よりもしっかり目が覚めている様子だった。みんな挨拶してきて可愛いもんさ。夏樹の肩に座ってるあたいにもきっちり挨拶していくんだから、しっかり教育されているよ。先生をやってるエルフ達のお陰かねぇ。
食堂のおばちゃんが夏樹に「背が高くなるよ!」と言いながら牛乳を2本渡していた。さすがにこれには怒るかと思いきや、夏樹は「ほんとか!」なんて言いながら受け取ってるから、この人は本当優しいというか、なんというか……。
「今のは怒って良いんじゃないかい?」
「へ? 何をだ? おれの背が伸びるように応援してくれてんだぞ」
「あんたもう育たないよ。人間でいう成長期は過ぎてるさね」
夏樹の年齢は知らないけんど、子どもではないから、成長期は過ぎてるはずだ。おとなは背が伸びないはずだから、夏樹の身長はもう伸びないはずさね。
あたいの言葉を聞いて夏樹は眉を八の字に下げた。
「まだ伸びるかもしれないだろー! おれだってもう少し背が高くなりたいんだ! 希望を持たせてくれ!」
「ごめんね。あたいが悪かったさ」
と言っても、絶望的だと思うよ。
身長低いの気にしてたんだね……。
とっくに夏樹の身長を抜き去ってる子どももいるくらいだから、気にしたら負けな気もするよ。
朝食の後は、子ドラゴンの散歩だ。孤児院の職員が面倒見てくれてたけど、連れてきたあたいらがなんもしないのはさすがに、ねえ?
親ドラゴンが見つけてくれりゃ良いけど、手がかりは全くない。もしかしたら討伐されちまって、唯一の生き残りなのかもしれないね。それだとしたら、この子も大きくなったら討伐対象になっちまうし……、どうしたもんか。
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