第21話
教会で神父に恋薬を渡した。どうやら本当に神父が飲んでくれる様子だったけんど、神父が不純異性交遊をするとは思えないから……どうする気だろうね?
今夜飲んでくれるそうで、明日の朝に感想を教えるとは言っていたけど自己処理する気なんだろうかねぇ。それはそれで神様的にはどうなんだか。
「よし。後は明日の朝に感想を聞いて納品だな。一週間もかからなかったな」
「効きが悪いって言われたらどうすんだい? っていうか、あの兄さんって薬の効果あるんだよね?」
「あっはっは。いくら小焼でも恋薬の耐性はねぇよ。体は筋肉の鎧かもしれねぇけど、中はやわらかいんだから」
「あんた、言ってることがちょっと怖いよ」
「おっと。職業病だな」
そんなことを話しつつ孤児院に戻り、子ども達と戯れた。色んな種族がいるんだから、ここに該当する混血児がいたかもしれないけど、子どもに飲ませるわけにもいかないもんね。うっかり子どもが子ども産んだらややこしいことになっちまうさ。
翌日。早朝から夏樹のスマホが鳴っている。アラームではなくて着信だった。神父から着信だってのに、うちの人はぐーすか寝ている。仕方ないから、あたいが出るか。
「もしもーし。夏樹はまだ寝てるからあたいが出たよ」
「相変わらずですね……。では、伝えておいてください。あの薬ですが、きちんと効果はあります。牛乳泥棒の野良サキュバスを捕まえました」
「へっ⁉ サキュバスを捕まえたってのかい⁉」
「はい。では、聖務がありますので」
プチッ、ツーツーツー……。
話したいことだけ話してすぐ切っちまったよ。これから朝の祈りの時間なんだろうね。夏樹は寝てっけど。
幸せそうにむにゃむにゃ言いながら寝てるんだけど、そろそろ起きないとまずいんじゃにかねぇ……。エクソシストだって言っても、聖職者だし、神父とも呼ばれておかしくないはずだよ。あたいにゃよくわかんないけど、聖職者はみんな「神父」って呼んでも許されそうじゃないかい。
夏樹がやっと起きたので、神父から電話があったことを伝えておいた。
「あー、それじゃあ、おれ、報酬貰えねぇな」
「神父が捕まえちまったし、もう消し炭にでもしちまってんじゃない?」
「あいつならやりかねないんだよなぁ……。有機物を畑の肥料にしがちなんだよ。とりあえず、恋薬の効果は保証できたから、届けに行くか」
「そうさね」
まずは恋薬をリラクゼーションサロンのサキュバス・メイに届けることにした。
午前中でも彼女は変わらずに「ご指名ありがとうなの」と言いながら出てきた。
「もうお薬できたなの? 効果あるなの?」
「おう。教会の神父に飲んでもらったから、きっちり保証するよ」
「神父様なら信頼できるなの。報酬はギルドに預けてあるなの。うちから連絡しておきますなの。今度はマッサージ受けに来てなの」
「あははっ、そうさせてもらうよ」
夏樹は相変わらずデレデレしながら胸を見ているので頬を抓っておいた。この人は気を抜いたらすぐに胸ばかり見るから、おっぱい大好きだってわかりやすいんだよ。牛の獣人の店にホイホイされそうになっちまうから、あたいが殴ってでも阻止してやらなきゃいけないのさ。
次はギルドに移動。サキュバスからの報酬を受け取る。けっこうな金額だった。あの子人気者のようだね。さすがサキュバスなだけあるよ。他の種族よりもリラクゼーションという分野で重宝されるもんさ。エロいことする店に多くいるのに、健全なマッサージしてくれるってのもギャップで売れてんのかもね。
「お兄ちゃん、帰るの早いよ! こっちの報酬の領収書もあるから!」
「へっ? そうは言っても、サキュバス討伐の依頼は小焼が解決しただろ?」
「うん。でも、お兄ちゃんの薬が役立ったみたいだよ。とりあえず、受け取って」
「なんか見たことねぇくらいの額の報酬だな⁉ ……全部一瞬で消えちまうんだけど」
恋薬がどう役に立ったのかわかんないけど、夏樹の懐が潤っていく。
でも、神父の車の修理と車検代になるから、ぜーんぶ消えちまうのさ! かなしいもんだねぇ。一瞬だけ大金持ちさ。
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