第19話
「そういえば、ドラゴンを孤児院に置いてきて良いのかい?」
「エルフ族の子が世話してくれるらしいから大丈夫だろ」
まあ、色んな種族のいる孤児院だからドラゴンの世話をできる子もいるとは思うけんど、親ドラゴンが襲ってきたらどうすんだろうか。……他の職員がどうにでもできるのかもね。
「それで、どういう依頼なんだい?」
「詳細はお店で直接話しますって書いてたから、店に行ってやんなきゃならねぇんだけど……、住所を見た感じだと、昨日のとこだ」
「あー、そんなら、あの子が依頼主ってことかねぇ」
「他にもサキュバスがいるかもしれねぇけど……」
指定された店に向かう。やっぱりあの店で間違いないし、受付のエルフ族に声をかけたら、昨日のサキュバスが出てきた。
「こんにちはなのー。ご指名ありがとうございますなの」
「指名っていうか……、今日は、おれがあんたの仕事受けるほうなんだよ」
「ギルドから連絡来てますなの。よろしくお願いしますなの。握手あくしゅー!」
手をぎゅっぎゅっと握られて夏樹はデレデレしていた。とりあえず、頬に蹴りを入れておく。
「おはるさん痛いよ」
「あんたがデレデレしてるからさね。それよりも、どういう依頼なのさ?」
「魔法薬を作ってほしいなの。恋のお薬を頼みますなの」
「恋薬なら、そこらの魔女の店で買えそうなもんだけどねぇ?」
どうしてギルドに発注を出してんだかわからないもんだ。ふゆもできる人が少ないとかなんとか言ってたような気もするけんど、薬なら、その辺でも買えるってもんさ。恋薬も珍しいもんじゃないし。
「市販薬だと効果が薄いなの。もっと、うちをメロメロにさせてくれるようなものが良いなの!」
「あいあい。作るのは良いけどさ、使う相手の種族によって調合を変えないといけねぇんだ」
「混血児の場合はどうしたら良いなの?」
「あー、それだと、魔力の強いほうをベースにするよ」
あたいにゃわかんない話だが、夏樹はきちんとサキュバスから聞いた情報をメモしていた。殴り書きしてんのかと思ったけど、これ、お医者がよく書くやつだ。あたいにゃ読めないけど、医者はすぐ読める文字だ。
「あいあい。ダークエルフをベースにすりゃ良いんだな」
「そうなの! うんと強いやつを作ってほしいなの! きっちり効果の保証をしてくれないと嫌なの!」
「そうなると、誰かに飲ませねぇといけないから時間かかっちまうけど良いのか?」
「良いなの。うち、待ってるなの」
「よしわかった。来週には仕上げて持ってくるよ」
「楽しみにしてますなの」
というわけで、打ち合わせは終わったようだけど、効果の保証までするって大変な仕事だね。楽勝だとか言ってたのは気のせいだったか……。
「あのサキュバスが求めてる薬って作れるものかい?」
「作るのは簡単だが、飲ませるのが難しいかもな」
「飲ませるって、ダークエルフだろ? それなら、孤児院にもいるじゃないかい」
「純血のダークエルフじゃなくて、混血児だよ。魔術師とダークエルフの混血児を見つけるのってなかなか難しいぞ」
その組み合わせなら、心当たりがある。夏樹だってわかってると思うんだけんど、気付いてないのかねぇ。
「……あたい、ひとり、心当たりがあるよ」
「おっ。さすがおはるさん! その人に頼んでみっか!」
「小焼神父」
「そういやそうだったな……。絶対断られると思うから候補から除外してた」
と言いつつ、夏樹は小焼神父に電話をかけていた。事情を説明したところ、はっきり断られた。更に叱られた。
「やっぱり駄目だったか」
「これでノリノリで快諾されても怖かったけどね」
「そりゃそうだ」
とりあえず、地道に薬を試してくれる人を探さないといけないね。
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