第18話
次の日。神父なら聖務日課をしている時間だと思うけど、夏樹はまだグースカ寝ている。寝ている間に部屋の掃除をしてあげようかねぇ。
まずは、ベッドの近くに転がっている丸まったティッシュをゴミ箱に運ぶ。……このティッシュ何に使ったか考えないでおくよ。サキュバスが喜んで持って行きそうな雰囲気はしてたけど。
あちこちに散らばってる書類を集めて机に……置きたいけど、机もグチャグチャだ。一応モノを書けるスペースはあるけんど、汚れすぎさね。
棚のプラモデルはケースに入れて綺麗に並べてるってのに、他のものがだらしない。エクソシストの商売道具の銀の銃弾まで床に転がってるよ。というか、銃持ってんのかこの人。何処に銃があるのかわからないから暴発しないか心配になってくる。起きたら聞いてみたほうが良いね。
隅のほうに銀の銃弾が箱積みされてる……。使ってないとしても、この保管の仕方は突然爆発しないか心配だよ!
「夏樹ー。そろそろ起きなよ。七時回ったよ」
「ふわぁふ……。んー。おはよぉ。何処にいんだ?」
「あー、ここさ」
そういえば、四つ葉を乗せてなかったや。
あたいを見つけた夏樹は嬉しそうにへにゃっと笑った。これがけっこう可愛いんだ。元から可愛い顔してるとは思うけんど、笑うともっと可愛い。声で男だってすぐにわかるから、女装しても無駄だろうね。
「あり? なんか、部屋が綺麗になってんな?」
「ごちゃごちゃし過ぎだから、掃除させてもらったよ」
「ありがとう。助かるよ!」
「あとさ、あの銀の銃弾は何だい? あんた、銃持ってるんなら、何処に保管してるのさ? うっかり暴発させたら怖いだろ」
「おれは銃持ってねぇよ。あれは、小焼の使うやつだ」
「何で教会じゃなくてここにあるんだい?」
「何でだったっけな? 忘れたや」
深い意味は無く、物置にされてるって解釈で良いかねぇ。
まあ、安全っちゃ安全だろうね。エクソシストの管理下にあるなら。
朝食を食べて、子ども達に聖書の解説をしたり、薬学のお勉強をさせたり、とても地味な仕事が続く。これが孤児院での仕事なんだろうけど、あたいは血沸き肉躍る激しいバトルが見たいんだ。さっさと退治の仕事でも入らないもんか。そこらの魔物でもつつきまわして孤児院に迷い込ませるってことも考えたけんど、それをしたら、あたいが退治されちまう可能性があるから、やっぱりやめた。
でも暇だねぇ。子どもの相手は嫌いじゃないけど、バトルを見たいのさ。実戦形式の何かしてほしいもんだよ。
「ねえ夏樹。魔物退治の授業とかないのかい?」
「防衛術の授業はあるけど、おはるさんが求めるような殴り合いじゃねぇよ」
「何であたいが殴り合いを求めてるってわかったんだい?」
「暇そうだからさ。まっ、孤児院での仕事はこれぐらい平和なんだ」
「平和なのは良いけど、刺激が足りないねぇ」
「そう言わないでくれよ。午後からギルドに行くからさ」
「討伐の仕事を受注しなよ。あんたエクソシストなんだからさ!」
「おれはエクソシストって言っても魔法薬師のほうがぴったりなんだけどなぁ」
午後になって、ギルドに立ち寄る。
夏樹の妹のふゆが掲示板に何かを貼っていた。
「何貼ってんだい?」
「これはね、新規募集のお知らせだよ。受注するならカウンターに来てね」
「あたいも受注できるものなのかい?」
「ギルドメンバーになれば、どんな種族でも働けるよ! ピクシー種の子もけっこういるんだ。産業スパイとか!」
姿が見えないから、いくらでも情報を盗み放題だもんね。スパイって言えば良いように聞こえるけど、やってることは盗撮と盗聴になるから、退治されないか心配になっちまうもんだ。
「ついでに、お兄ちゃんにオススメのお仕事はこちらだよ」
「おっ。サキュバスからの依頼だな。これやるよ」
「サキュバスも依頼出すんだね?」
「でも、なかなかできる人いないんだよね。お兄ちゃんなら楽勝だね」
夏樹も即決してたくらいの依頼だけど、どういう内容だったんだか……。
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