第16話
葉っぱを追っていくと繁華街に着いた。夜でも煌びやかで眩しい街はあたいにゃ刺激が強すぎる。目が痛くなっちまう。
あちらこちらから呼び込みの声が聞こえる。店の看板を持って立っている女もいた。あれで金を貰えるなら良い商売かもしれないけど、立ちっぱなしで可哀想かもね。客がつかないから、ああやって外に出されてるんだろうし。
「サキュバスはこの辺りにいるようだよ」
「おー、こりゃあ……、嬢しかいないような気がするな」
「あたいもそう思うよ。せっかく来たんだし、テキトーな店に入ってみるかい?」
「あのなぁ、おれ、聖職者だぞ。着替えてるならまだしも、制服のままなのは、さすがにまずい」
「そういう常識力はあるんだねぇ」
「おれを何だと思ってんだよ!」
怒られちまったや。こういうところはしっかりしてるんだ、この人。
人探しの魔法でサキュバスがいるところを示すのは簡単だけれど、名刺をくれた子を見つけるほうに効果が出ちまうんだ。そりゃそうだよね。
何か手掛かりになりそうなものはないかと聞き込みをすることにした。ぼーっと突っ立ってる子に話しかけてるのは、その子が暇そうに見えたからだよね? 牛の獣人だから、胸がでかいってのが理由じゃなくて。
「サキュバスなら、あっちの店だわさ。それより、あたいと遊んでかない? おにーさんならサービスするよー?」
「い、いや、良いよ! ありがとな!」
サキュバスの嬢がいる店を知りたいように思われちまってるね。そりゃそうか。あたいも聞き込みを手伝うにしても、夏樹から離れたら見失いちまいそうな人の多さだ。聖職者の服を着てるから目立つっちゃ目立つけど……。
「うーん。やっぱりこの辺にはいねぇのかな」
「そうみたいだねぇ。サキュバスに聞いたらわかるとかないかい?」
「同族のことは、同族に聞けってことだな。店に行ってみっか」
まず、ドラゴンを抱えたまま入店できるのかって思うんだけんど、それには触れないんだよね……。服装のことばかり気にしてっけど、ペット扱いされそうなドラゴンは入店可能なのかねぇ。
名刺の住所を頼りに店に向かう。思ったよりも地味な外観だ。駅前のリラクゼーションサロンだって言ってたから、もっと派手派手だと思ったら、周りと比べたら地味な店構えだった。
「ガチのリラクゼーションサロンだ……」
「あたいも驚いているところだよ……」
隠語で風俗店の扱いをしていると思っていたら、ガチで真面目にリラクゼーションを目的としたサロンのようだ。全身もみほぐし六十分三千円は安いと思うよ。アロマオイルマッサージだと値段が少し上がるようだけど、それでも六十分で四千四百円は安いさ。お手軽に施術を受けられるから、繁盛しちまうね。
「これなら、夏樹が入っても大丈夫じゃないかい?」
「まあ、これなら小焼も怒らねぇかな……。レンタルショップで成人向けコーナーに入ったら怒られたことあっけど」
「そりゃ怒られるに決まってるさね」
「仕方ねぇだろ。淫魔が入り浸ってて困ってるから祓ってくれって依頼があったんだ」
「それなら怒られると思わないけど、何かしたんだろ?」
「おう。ダークエルフのおねえさんモノを借りて帰った」
「あたいは、あんたの性癖を聞きたいわけじゃないんだよ」
そういう話をしつつ、リラクゼーションサロンに入る。シックな店内はオルゴールのメロディが流れていて、とてもリラックスできそうだ。
受付にはエルフの女性がいた。
「聖職者の方がいらっしゃるとは珍しい! ようこそ! と言いたいところですが、ドラゴンのご入店はちょっと……」
「いや、おれは客じゃねぇんだ。この店にサキュバスいるよな?」
「うちには正式な身分証を持ったサキュバスのスタッフしかおりませんよ!」
「違う違う。監査に来たんじゃなくてだな、実は最近近くの街で野良のサキュバスが牛乳泥棒しててさ。同族のことは同族に聞いたらわかるかと思って調べてんだ」
「それでしたら、そちらにかけてお待ちください」
聞き込みして何か成果が出たら良いんだけど、どうだろうねえ。
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