第13話
魔女の求める材料を探して川の近くにまでやって来た。ここには魚人もいるはずだ。
「魚人でも狩るのかい?」
「密猟者ならそうしたかもしんねぇけど、おれはそういう無駄な争いをしたくないな。もっと平和的解決するよ」
「というか、何を取りに来たのさ?」
「魚人のウロコがいるんだとさ。ウロコは生え変わって落ちてるはずだから、争わなくて良いんだ。まあ、Sランクのものが欲しいなら魚人に頼まないといけねぇが、今回はCだからな」
「夏樹の腕なら、DをCにもできるんじゃないのかい?」
「そうすると加減が難しいんだ。SやAならそうしただろうな」
「ほーん」
下位素材から簡単に引き上げられるなら、そうしたほうが良いとは思ったけんど、一段階だけだと加減が難しいんだね。加減が難しいならCもDも一緒に見えそうなもんだけど、プロから見たらすっごい別物になってそうだ。あたいにはさっぱりわからない世界だね。
話をしつつ、夏樹はウロコを拾っていた。そこに川から上がって、魚人が近付いてきた。
「ちょっとそこの聖職者さん。ウロコが欲しいなら拾わずに声をかけてくれたら良いのに」
「あはは、そうは言ってもな。依頼品を集めに来てるんだが、先方の求めているものがCランクなんだ。あんたらに声をかけたら最高級の品になっちまうだろ?」
「それなら、これをあげるから、河原を這いつくばるのはおやめよ。制服を汚しちゃ上司に叱られるよ」
「おー、それはそうだ。ありがとな!」
魚人は夏樹に小さな麻袋を渡すと、丁寧に頭を下げて川へ戻って行った。
麻袋の中にはウロコや貝殻が詰まっている。たぶん、これはゴミを渡されたんだ。
「こりゃ良い抜けウロコだ! 貝殻まであるぞ! 依頼品を抜いても、おれが使うのに十分な量があるから、ありがてぇな」
「ゴミを渡されただけじゃないかい?」
「魚人からしたらゴミだが、おれからしたら素材だよ。Cランクのものを抜いて、残ったものが特Sランクなのがラッキーって感じだな」
「そういうものかい」
どういう基準でランク付けされてんのかあたいにはわからないけんど、夏樹が喜んでいるから良いとしておこう。
次は森の近くで草を掻き分けている。クローバーが多く咲いているところだから、あたいの四つ葉もついでに探してもらいたいところだ。枯れてくるとダサいことになっちまうし、仲間内で笑われるんだ。
夏樹に言おうとしたら、四つ葉を摘まんだ指先が見えた。
「ほい、おはるさんの分」
「ありがとね。助かるよ」
「どういたしまして。これがないとおはるさんの可愛い姿が見えないもんな」
「急に可愛いなんて言わないどくれよ!」
「痛い痛い!」
変なことを言い出すから、つい、頬に蹴りを入れちまった。
新しい四つ葉を頭に乗っけて、前までのものは土に埋めておいた。こうしておけば、勝手に土に還ってくれるんだ。
素材集めを続ける。森に入ったので、次はキノコを探すようだ。森には妖精種がいるものだが、見当たらないので、なんだか嫌な予感がする。
「夏樹。妖精種がいないってことは、何かやばいのがいるかもしれないよ。気をつけな」
「そういえば、さっきからいないな。普段なら妖精が話しかけてくるってのに」
そう言いつつも奥へ進んで行く。大きな木の下にカラフルなキノコが生えていた。これは上物だ。
「ランクが高いキノコじゃないかい?」
「ああ、キノコはAランクを求めてるから良いんだ。キノコは絶対に上物のほうが良いようだな。こだわりってのを感じるよ」
キノコを収穫していく。どれもカラフルで絶対に食べちゃいけない雰囲気だ。
そこに、駆け寄ってくる足音が聞こえて来た。
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