第12話

 サキュバス討伐には時間がかかりそうだからってことで、他にも受注することにした。

 兄妹で仕事の相談してるの面白いねぇ。

「お兄ちゃんはエクソシストだし、魔族相手の方が良いよね?」

「魔族以外でもなんとかなっから、手軽に受けられそうなの出してくれ」

「それじゃあ、魔女の手伝いどう? お兄ちゃんなら魔法薬作れるし、すぐ終わると思うよ」

「おっ、良さそうだな! それやるよ」

「じゃあ、詳細見てサインして。サキュバスの方の書類準備してくるね」

 ふゆは奥に引っ込んで行った。

 魔女の手伝いって何するんだろうね? 渡された書類を読む。どうやら魔法薬調合の手伝いのようだ。素材集めも任せられるようで、調合に必要な素材がリスト化されていた。その中には、マンドラゴラがある。

「マンドラゴラなら、神父に貰えば良いね?」

「小焼のとこから貰うと、薬のランクが合わなくなっちまうよ」

「そうなのかい?」

「ほら、欲しいマンドラゴラのランクはC程度だ。小焼の育ててるやつは特Sだからさ」

「ほーん。そういうのがあるんだねぇ」

「まあ、教会で特Sランクのマンドラゴラを栽培してんのどうかと思うけどな……。本来なら、マンドラゴラ農家で仕入れるものだぞ」

 そう言いつつ、夏樹は書類にサインしていた。

 ふゆがサキュバス討伐の書類を持ってきたので、こちらにもサインして、これで受注完了。

 早速魔女の手伝いをするために素材集めに出るようだ。

「夏樹ならこの薬も作れるのかい?」

「ああ。作れるよ。孤児院に戻りゃ素材もあるけど、ランクが違うんだよなぁ……。Cランクって地味に探すの難しいな」

 確かに高級なものならすぐに見つかりそうだけど、普通のものは大変そうだ。そこらへんにあるようなありふれたクオリティってのは、けっこう難しい。普通が一番難しいんだ。悪いのはわかるけど、普通へ難しい。

「ランクが上のを揃えちゃいけないのかい?」

「今回は駄目だな。魔女によっては喜んで使ってくれるんだが、こだわりが強い職人気質の魔女は『絶対にこれ!』としか言わない。それで、今回はこだわりが強い魔女だ」

 こだわりが強いやつは何言っても聞かないもんね。どこにでもそういうやつはいるもんなんだ……。

「素材集めはともかく、サキュバスはどうすんのさ?」

「それなんだよなぁ……。サキュバスには縄張り意識があっから……、追い出されたのが牛乳泥棒になってんのかな」

「可哀想な子なんだねぇ」

「まあ、退治するのは可哀想だから、見つけたら、どっかのリラクゼーションサロンに任せるよ」

「サキュバスの嬢なら大満足だろうね」

「なにしろ、本職ってやつだもんな」

 夏樹は話をしながら草を摘んでいた。素材だと思うけんど、こんな道端に生えてる雑草で良いのかねぇ。

「これも素材かい?」

「ああ。理想通りのCランクだな」

「ランクの高い方が良い薬になるんだよね?」

「いいや。素材のランクが高くても作り手の技量によるかな。ほら、高い食材使っても料理が下手なやつはまずくなるだろ。あれと一緒」

「それなら、夏樹はいつも何使ってんだい?」

「Dだよ」

「……低いんだよね?」

「そうだな。評価的には最下位だ。でも、処理したら特Sランクになっから」

「そういうものなのかい……」

 よくわからないけんど、夏樹の腕がかなり良いことはわかった。Dランクを特Sにまで引き上げるってすごいね。

 さて、素材集めはまだまだ続きそうだ。

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