第38話 第3の選択肢
「選べ。おまえの未来を」
ドッペルは田園風景の幻と、主のいない椅子。二つを指し示した。
「ユウキの手を取れば、冒険に出かける前の時間まで戻してやる」
「……椅子を選んだら?」
「次の記憶の担い手になる。再びやってきたオレに同じように道を指し示せ」
「終わるか、続けるか……か」
カーラの問いかけの意味がわかった。
終わらせ方を選べとはこのことか。さすがは心眼の賢者さまだな。
「ひとつ訊かせてくれ。おまえはレッドハーブが入ったシチューの味を覚えているか? ユウキと見上げた星の美しさを知っているか?」
「知らないな。1巡前の”オレ”はそんな悠長な旅をしなかった。最速で魔竜の洞窟に挑んだ」
「……そうか」
周回を繰り返しているんだ。効率重視な生き方を選ぶこともあるだろう。
だが――――。
「オレはオレだ。おまえじゃない」
オレは首を横に振る。
「ユウキはな。オレがいい方向に変わったと言ってくれた。少し抜けてるところが可愛いって笑ってさ。ベッドではリードを奪われまくりだけど、それもまたアイツの魅力的なところで」
「のろけか? 自分のことながら気持ち悪いぞ」
「それはこっちのセリフだ。おまえはオレだろ? なにを達観してんだ。人生疲れきった顔をしやがって!」
オレは暗闇に手をかざす。そして掴んだ。
ユウキと一緒にクリスタルゴーレムを倒して手に入れた、光の剣を。
「おまえの冒険には遊びが足りない! だから途中でつまづくんだ。ユウキが求める未来ってのは、明るく楽しい胸躍る冒険だ。家でのんびりすることでもない。早足で駆け抜けることでもない!」
クリスタルソードを握る手にチカラを込め、オレは願う。
求める。最善とは言わないまでも、最良の未来を。
「今までの人生を後悔してるなら、おまえらの無念をオレに託せ! 今度はうまくやれる。やるためにオレはここにいる! オレは不落のロイス! 傾国の魔女を……」
いや――――。
「愛する女に剣と首を捧げた不死の騎士だ! バッドエンドのフラグなんて、すべてへし折って幸せになってやるっ! だから――」
クリスタルソードが虹色に輝く。
オレの中にある、ありったけのチカラを込めて剣を振り下ろす!
「とっとと道を
――――キシュゥゥゥゥン!
暗闇を縦に切り裂く、一筋の閃光。
光が空間にあふれ、田園風景の幻も、古びた椅子もたちまち消え去る。
「そうだ。それでいい……。先に進めるのはいつだって、自ら道を切り開ける者だけ。迷いに迷ったが、ようやく答えを見つけたな」
ドッペルは光の中で優しく微笑む。
「勝利のフラグはすでに立っている。後は頼んだぞ」
「任された!」
光の中に消えるドッペル。
オレは過去を振り返らず、負けた記憶を己の糧にして前に進む。
光の先――――、後戻りできない“今”という時間に!
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ふいに目が覚める。オレは地面を舐めていた。
(そうだ。オレはコジロウに後ろから刺されて……)
地面の魔法陣結界の影響で、死に戻りは使えない。
オレは致命傷を負って気を失っていただけだった。
(ドッペルとの会話……すべて覚えている)
臨死状態で過去のオレと対話した。
死に戻りをしたらきっと、今回のオレが椅子に座っていたんだろう。
そうして、次のオレに望みを託す。
傾国の魔女が人形を生み出したように。
だが――――。
(ここで終わらせる……)
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半妖の少年退魔師。登録者数=霊力のチート能力に覚醒して最強配信者として鬼バズる。~モンスターを式神にしてダンジョンマスターに成り上がります~
◇ジャンル:現代ファンタジー
◇タグ:ダンジョン/配信/男主人公/最強/高校生/ハーレム/成り上がり/カクヨムオンリー
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