ざまぁされた勇者と無能魔女の死に戻りループ無双~追放者に復讐されたら死亡フラグ回避のチートスキルに覚醒しました。今からでも遅くない! 俺と冒険の旅に出よう~
第25話 昇格試験2。水晶の洞窟を攻略せよ
第25話 昇格試験2。水晶の洞窟を攻略せよ
翌朝。
オレとユウキはまだ日が昇りきらないうちに行動を開始した。
目的地である水晶の洞窟には、徒歩で1時間ほどで到着。
近づくにつれ大地が荒れ始め、入り口までくると草の一本も生えていなかった。
荒涼とした枯れ土の大地。大きな岩と岩の裂け目に分け入ると……。
「ここが水晶の洞窟じゃ」
虹色に輝くクリスタルで覆われた、神秘的な洞窟が姿を現した。
見たこともない美しい光景にユウキが息を呑む。
「すごい! キラキラして綺麗!」
ユウキはクリスタルに目を奪われ、手を近づけるが。
「待った」
オレはユウキの手を掴んだあと、ユウキの胸元にいるカーラ人形に問いかける。
「クリスタルに触れても平気なのか? 割れたりしないか?」
「ふふふっ。よいことに気がついたな。一問目は正解じゃ」
カーラ人形が小さな手を上げると、器用に印を結んで魔力を込めた。
「光の精霊よ。契約に従い、その姿を現せ。……サモン。ウィル・オ・ウィスプ!」
ゆらり……。
周囲の空間が陽炎のように揺れて、人の頭ほどの光の球が浮かび上がる。
その数はひとつだけではない。
無数の光の球が連鎖的に姿を現わし、気がつけばオレたちを取り囲んでいた。
「お務めご苦労じゃったな。休んでよいぞ」
カーラ人形が声をかけると、光の球は明滅を繰り返した。
そのまま、すぅ……っと風に溶けるように消えた。
「今のは……?」
「ワシと契約していた光の精霊じゃ。防犯用の自動迎撃スキルを備えておってな。クリスタルに触れたら1000℃の光線魔法で焼かれて死ぬるぞ」
「えええっ!? そんな即死トラップがあったのか」
危ない。不死なオレはともかく、ユウキまで死なせるところだった。
「ロイスに一発浴びせて【光属性耐性】を覚えさせてもよかったな。失敗失敗」
「無駄に殺されるのはごめんだ。死に戻ってもダメージは残る。これからダンジョンを攻略するんだ。体力は減らしたくない」
「くふふ。わかっておる。昨晩も自重しておったようじゃからのう」
「聞いてたのか!?」
「正確には見ておった、じゃな。ワシの【心眼】は何でも見通す」
カーラ人形の目が妖しく輝く。本当に油断も隙もない。
「あはは……。でも、どうして入り口にこんなトラップを?」
ユウキは苦笑を浮かべつつ、胸元に鎮座するカーラ人形に訊ねた。
「ワシの権限で入り口を封鎖したと言ったじゃろ? 物理的な鍵は信用ならぬから、精霊に護らせておったんじゃ。罠に気がつくかどうかも試験のウチじゃよ」
会話をしている間に光の精霊の気配が完全に消えた。
宝石のようだったクリスタルの輝きが少しだけくすむ。
「これで自由に出入りが可能じゃぞ」
「ありがとう」
「礼には及ばん。この洞窟を試験会場に選んだのはワシじゃからな」
カーラ人形はユウキの胸の中で腕を組んでふんぞり返った。
「さあ、試験開始じゃ。おぬしらの実力、存分に見せるがよい」
◇◇◇◇
水晶の洞窟は内部もすべてクリスタルで覆われていた。
元は天然の洞穴だったようで、内部の構造に建築的な一貫性はなかった。
通路かと思ったら行き止まりだったり、部屋かと思ったらただの窪みだったり。
「正しい道を探すのにも一苦労だ」
精霊が宿っているのかクリスタルの壁は淡く光っており、松明いらずだった。その点だけは感謝したい。
そうして、しらみつぶしに通路を調べていき……。
「やっぱりこの先だよな……」
たどり着いたのは大きな通路。だが、行く道を大岩が塞いでいる。
オレたちがいる通路は他と比べて幅も高さもあり、宿屋が一軒スッポリと収まるほどの広さがあった。
そんな広い空間を覆うほどの大きな岩が道の真ん中に転がっている。あまりにも不自然だった。
「他の道は探した。調べてないのはこの岩の向こうだけだ」
「隙間風も岩の向こう側から吹いている。先に道があるのは間違いないと思うよ」
「問題はどうやって岩を退かすかだな」
オレの呟きに、ユウキはメイスを取り出した。
「メイスで叩いて壊す?」
「さすがに壊せないだろ。強化魔法をかけたとしても先にメイスが壊れそうだ」
オレは岩の堅さを確かめるため、表面を拳で叩く。
すると――――
「M”A”A”A”!」
「岩が動き出した!?」
「こいつはロックゴーレムじゃないか!?」
通路を塞いでいた岩が突如動き出して、大型の岩巨人が姿を現した。
オレはユウキを下がらせて、距離を取ってから聖騎士の盾を構えた。
「MA!」
通路を覆い隠すほどの巨体がゆらり、と揺れる。
――――ドシン!
一歩踏み出すだけで地震が発生した。
大きな震動で天井を覆う水晶の欠片がパラパラと落ちてくるが、そんなことは気にせずゴーレムは一歩、また一歩と大きな音を立てて近づいてくる。
「自分も生き埋めになるつもりか!?」
「ゴーレムは召喚者の命令を聞くだけだ。そこまで高い知能はないんだよ」
「おい、カーラ! ゴーレムは大地の精霊の一種だろ? あんたが操ってるのか?」
「勘違いするでない。ワシが管理していたのは入り口の封印だけ。内部の魔物はワシの管轄外じゃ」
「ゴム蔵の仲間じゃないなら遠慮なく倒せるね!」
ユウキは背中の死印を発動させて魔女モードに変身しようとする。
オレはユウキの手を掴んで止めた。
「こんな序盤で変身するな。奥にボスがいるのも確定している。今は魔力を温存するんだ」
「ロイスってば昨日からそればっかりだね」
「これでもパーティーのリーダーだ。メンバーの命を預かっている。無茶なことはさせられない」
基本方針が護りや受け身なのはわかっている。
これもパラディン時代の名残だろう。
だが、一度身についた習慣はそう簡単に変えられない。
「それに何度も死を体験したからかな。死の匂いを肌で感じられるようになったんだ」
「ほぅ……?」
オレの呟きにカーラ人形が興味深そうに声を漏らす。
「くふふ。視える、視えるぞ……。ロイスよ。おぬしは【虫の知らせ】のスキルを体得しておるようじゃ」
「【虫の知らせ】?」
「【死因回避】の影響で覚えた特殊な感知スキルじゃな。死の気配を察知するパッシブ効果が備わっておる。第六感と言えばわかりやすいか」
「スキルに登録されてるってことは、この勘は当たるんだな」
カーラのお墨付きがあるなら信じられる。
オレは先走らないようにユウキの手を掴んだ。
「そういうわけだ。オレが道を切り開く。ユウキは後ろをついてきてくれ」
「わかった。キミのリーダーとしての指示はいつも的確だったからね。今まで一度も疑ったことはない」
「ありがとな」
ユウキはそこまでオレを信頼してくれていたのか。
それなのにオレはユウキを追放しようとして……。
「ユウキはオレが護る!」
オレは両手で盾を構えると、気合いを入れ直して盾技スキルを発動させた。
「【フィジカルガード】!」
【フィジカルガード】は、物理防御力を上げる盾技スキルだ。
パッシブスキルである【頑強】【苦痛軽減/体】は常に発動しており、並大抵の攻撃ではビクともしないだろう。
「うおおおぉぉぉぉっ!!」
オレは盾を構えたままロックゴーレムに突撃を仕掛ける。
「M”A”A”ッッ!!」
ゴーレムが大きな右腕を動かして、オレを叩き潰そうとする。
「遅い!」
動きを見てからでもパンチを避けられる。
オレはゴーレムパンチを避けたあと、無防備になった足下を狙った。
「くらえ! 【シールドバッシュ】ッ!」
【シールドバッシュ】とは、前に踏み込んだ衝撃で相手を突き飛ばす盾技スキルだ。ゴーレムは斬撃には強いが、破砕攻撃には弱い。
「砕けろっ!」
――――ズガンッ!
「G”A”A”ッ!!」
人間でいう
「これでトドメだ!」
オレは続けざまにシールドバッシュを食らわせて、ゴーレムの両足を砕いた。
「G”UAAAaaaa…………!」
バランスを崩して地面に倒れたロックゴーレムは、自分の体重を支えきれずに粉々に砕け散った。瓦礫の中から立方体の魔石が飛び出す。
――――パリン!
自ら生み出した瓦礫に押しつぶされて魔石が砕け散る。
ロックゴーレムは断末魔の叫びをあげる間もなく、やがて砂になって消滅した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます